【ディープテックを追え】〝究極〟ダイヤモンド半導体実用化へ、スタートアップが生かす優位性
「究極の半導体」と呼ばれるダイヤモンド半導体。北の大地で開発を進める大熊ダイヤモンドデバイス(札幌市北区、星川尚久代表取締役)は、2025年度にもダイヤモンド半導体のサンプル出荷を始める。東京電力福島第一原子力発電所の廃炉作業での活用を視野に入れる。量産を見据え、26年度には福島県大熊町に工場を設ける計画だ。
大熊ダイヤモンドデバイスは北海道大学や産業技術総合研究所(産総研)などが参加したプロジェクトの研究成果の実用化を目指して設立したスタートアップ。サンプル出荷に向け、ダイヤモンド半導体を製造するパイロットラインを構築する。大熊町に設ける工場では福島県などの補助金を活用していく計画だ。
ダイヤモンド半導体は現在主流のシリコンに比べ、高温・高電圧でも稼働する。次世代パワー半導体材料として期待される炭化ケイ素(SiC)や窒化ガリウム(GaN)よりも性能で優れる。電気自動車(EV)や宇宙空間での通信やビヨンド第5世代通信(5G)など高速通信での利用が期待される。
ダイヤモンド半導体の製造は難しい。固い素材であるダイヤモンドを加工したり、大口径のダイヤモンド基板を製造するには高度な技術が必要だ。国内外のプレーヤーがしのぎを削る中、星川代表取締役は「我々は一気通貫の製造プロセスのノウハウを保有している。この優位性を生かす」と強調する。
まず原発の廃炉作業での活用を見込む。放射線濃度が高い環境下でも動作するダイヤモンド半導体の特性を生かし、ロボットアームの先端に取り付け、原子炉内の中性子を計測するデバイスで使う。今後建設される原発向けにも応用する。将来はEVや宇宙領域へ展開する。
星川代表取締役は「(廃炉以外でも)ダイヤモンド半導体を使えば、冷却装置が不要になり製品を小型化できる。全体的なコストで考えればダイヤモンド半導体が入っていける市場はある」と力を込める。