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銀河のダークマターを「ひとみ」の肝要さが解き明かす

X線天文衛星の運用が安定期に。日本の技術はブレークスルーに貢献するか
銀河のダークマターを「ひとみ」の肝要さが解き明かす

ひとみのイメージ(池下章裕氏提供)

 宇宙航空研究開発機構(JAXA)が2月に打ち上げたX線天文衛星「ひとみ」が正常に動作し、安定的に運用できる段階に入った。今後3カ月間をかけて、衛星搭載機器の初期機能確認や校正のための観測を行う。国内外の研究機関や企業が関わる大型プロジェクトが宇宙の秘密を解き明かそうとしている。

 ひとみの目的は宇宙から飛んでくるX線を観測し、巨大ブラックホールなどの宇宙の謎に迫ることだ。JAXAの高橋忠幸プロジェクトマネージャは「瞳は物事の肝要なところを意味する。ひとみがX線天文学において肝要な働きを担う存在となってほしい」と熱意を込める。

 我々が住む地球の外にある宇宙は、星や暗黒物質(ダークマター)が集まる銀河、さらにその銀河が集まった銀河団などで構成されている。そこには高温や強重力の環境が存在するとされている。

 このような宇宙から放射されるX線を解析することは宇宙を理解する上で重要だ。プロジェクトの責任者の1人である米航空宇宙局(NASA)のリチャード・ケリー博士は「ひとみは高エネルギー天体物理学においてブレークスルーをもたらすのではないか」と観測に期待を寄せる。

 科学の探求は技術力の向上にもつながる。ひとみには複数の望遠鏡と検出器を搭載しているが、望遠鏡には超微細技術、検出器には半導体技術など日本が得意とする技術が多く盛り込まれている。こうした先端技術が日本の国際競争力を高め、我々の生活に還元されることが期待される。
(文=冨井哲雄)
日刊工業新聞2016年3月7日
日刊工業新聞記者
日刊工業新聞記者
X線天文衛星「ひとみ」は日本のX線衛星としては6機目で、15年まで稼働していた「すざく」の後継機。08年のプロジェクト発足から7年を経てついに打ち上げられた。宇宙の解明という共通の目的を果たすため、ひとみのプロジェクトにはJAXAやNASAを中心とする国内外の研究機関から200人以上が参加している。基礎科学の研究が進むとともに、そこに搭載されている望遠鏡や検出器に使われている日本の技術力が試される。 (日刊工業新聞社編集局科学技術部・冨井哲雄)

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