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「赤字ローカル線」再構築、“最適解”はどこか…国・自治体・鉄道で探る

利用者の少ないローカル線の再構築を議論する再構築協議会の制度が10月1日に施行される。鉄道事業者、自治体の双方から国に対して設置を要請でき、国土交通相が関係者を集めて協議会を開催、赤字路線の再構築を進める仕組み。人口減少が進み、赤字路線の維持が難しくなる中で地域の公共交通の維持は喫緊の課題となっている。

再構築協議会は自治体や事業者からの求めに応じて国土交通相が組織し、対象地域のバス・タクシーなどの公共交通事業者や道路管理者など関係者を集めて開催する。調査や実証事業なども国が支援する。鉄道の存続や廃止を前提とせず、国が行司役となって地域に必要な公共交通として望ましい在り方を議論するものだ。これまでも事業者と自治体による赤字ローカル線の協議会は各地で設けられているが、議論が紛糾して時間だけが経過したり、「協議のテーブルに着くと廃線に向かう」と地域が協議会に応じないケースが散見された。

対象となるローカル線には三つの条件がある。都道府県をまたぐ線区で、1日当たりの平均輸送密度が4000人未満を目安とし、JRでは特急列車や貨物列車が走行していない線区に限られる。輸送密度4000人未満は、1980年に制定された日本国有鉄道経営再建促進特別措置法における赤字路線のバス転換基準と同じ。ただ現実には輸送密度4000未満の線区は多いため、1000人未満を優先するとされた。特急や貨物列車が走行する路線は、地域の旅客輸送は少ないが基幹ネットワークとなる重要路線として対象から外れる。

10月を前にJR各社から協議会設置の意向が示されている。JR四国の西牧世博社長は26日の会見で香川県を除く3線区を念頭に「入り口の議論の開始について、関係自治体に相談し丁寧に進めたい」とした。JR九州は6日に再構築協議会の対象となりうる輸送密度1000人未満の路線は10路線12区あると発表し「交通ネットワークを持続可能なものにする取り組みを進めていきたい」とした。

JR西日本は岡山県と広島県を結ぶ芸備線の一部について協議会の設置を要請する方針。同社は2022年に地元自治体に協議を求めたが、自治体が拒否していた。斉藤鉄夫国土交通相は8月8日の会見で「10月以降に要請があれば制度の趣旨を沿線自治体にしっかり説明し、粘り強く要請する」と発言。広島県の湯崎英彦知事は9月12日の会見で「要請があれば沿線市と協議して対応、検討する」とした。JR北海道やJR東日本でも対象となる線区は多い。

再構築協議会の対象線区が通る地域は、過疎化が進み持続的に居住できるか問われる地域も多い。輸送密度の減少には人口減少や少子高齢化、自家用自動車の普及、デジタル化による生活スタイルの変化などさまざまな要因が考えられる。単に赤字路線をなくすということでなく、協議会を通じて各地域の実態にあう公共交通としての最適な姿を丁寧に求めることが必要となる。

日刊工業新聞 2023年09月28日

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