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《加藤百合子の農業ロボット元年#07》農業版インダストリー4.0に必要なこと

資材用語の標準化が急務
《加藤百合子の農業ロボット元年#07》農業版インダストリー4.0に必要なこと

スマホを使って作物の育成状況を管理する

 農業向けに各種ITシステムを構築し、サービス提供している大小の企業が存在する。農場があちこちに分散するその管理を行うもの(日本特有の事情だが)、栽培環境データを蓄積し出荷や品質を予測するもの、作業と人の管理を行うもの、販売管理に重きを置いたもの、そして、生産から販売までの全てが入っているものなどである。

 しかし、いずれも現場に広く導入され飛躍的な効果を上げているとの声を聞かない。農業は本質的に製造業と似ており、品質向上や量産化により売り上げが上がるか、コスト削減につながることが期待されるが、今のところその点で効果は限定的のようだ。

 要因は大きく二つあると考えている。一つは、コストの見える化ができていないところに導入したので、効果を明確に表現できない。もう一つは、中小企業や個人事業主の集まりのため、個々で導入したところで効果が小さいからだ。

 では、ITは不要なのかというと全くそう思わない。農業へのIT活用は始まったばかり。工業でインダストリー4・0だと叫ばれている以上に、生産から加工・販売までの連携や離れた地域間での連携など、立体的な実事業連携をして初めて大きな導入効果が得られると考えている。

全国の生産者がまとまって利用するネットサービスを


 作業名や肥料などの各種資材について用語を統一するところから取り組む必要があり、農水省や農業ITベンダーを中心に検討を進めている。ただ、作業名すら方言のような産地や品目ごとの特殊性があり、また、作業そのものが産地の差別化要素のところもあり、現場に浸透させるには時間がかかりそうだ。

 肥料の一種である堆肥は、農家や地域の循環により作られ投入されるため、登録されないものも多い。まずは管理が一つの業務として成り立つ規模にすること。さらに、生産性向上を重視する農業法人が用語標準化や資材の管理について連携して検討することが急務である。

 先日、エブリセンスというさまざまなITシステムを研究開発する会社を訪問した。農業にかかわらず、各地で収集される生データの売買をネット上で行うサービスを開始したそうだ。

 地域限定的なデータ蓄積では、連続する外部環境の変化を把握することができず、生育や市場予測などを行うには高額な費用がかかってしまう。そこで、品目ごとやITへの理解ある全国の生産者がまとまってこのサービスを活用することで、低価格で各種分析が進み、IT導入効果が飛躍的に向上するかもしれない。
日刊工業新聞2016年2月24日 ロボット面
加藤百合子
加藤百合子 Kato Yuriko エムスクエア・ラボ 代表
標準化は生産性向上のスタートラインですので農業者、行政、企業も一体となって大事な一歩を踏み出せればと思います。

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