自動車部品のDX支援、東海エレクトロニクスの取り組みに熱
ハードウエアの販売だけでなくシステム提供を通じ、顧客の課題解決につなげる東海エレクトロニクスの取り組みが熱を帯びてきた。子会社の東海テクノセンター(名古屋市中区、佐藤竜一社長)が、無線システムで設備などの状態を把握・解析するサービスの提供に乗り出した。現在は設備用と建物用のサービスを提供中で、金型用も2024年4月の開始を目指す。顧客である自動車部品メーカーなどのデジタル変革(DX)を支援する。(名古屋・川口拓洋)
診断・解析サービスは「V(ビジュアライゼーション)シリーズ」として展開している。23年4月、東海テクノセンターに社会インフラシステム事業部を設置。これまで25人で運営していたが、マーケティング本部などから10人を移籍、補強した。システム提案から開発、検証、設置、運用、保守までを一貫対応できる体制を整えた。数年内に年間10億円の事業規模に成長させる考えだ。
Vシリーズのうち先行するのはコンプレッサーやポンプなどの設備の状態を監視・診断する「V―イクイップメント」。振動センサーで設備の状態を可視化し、数値が基準を超すとアラームが鳴る。無線センサーのため断線がない。
取得したデータは中部電力グループの中電シーティーアイ(名古屋市東区)の技術を活用し解析。消耗品の交換期間の最適化や寿命予想につなげる。修理が必要な場合は東海エレクトロニクスの商社機能を活用し、交換品を確保するとともに月額課金制で保守を行う。東海テクノセンター社会インフラシステム事業部の坪井誠治事業部長は「顧客の設備保全に関する事柄を我々が引き受ける」と、顧客側の負担軽減のメリットを説明する。
工場など建屋の安全を評価する「V―ファシリティー」も提供を始めたサービスの一つ。センサーで建物の揺れを診断し、損傷具合の把握につなげる。「南海トラフ地震を警戒する自動車関連企業は少なくない。地震後に建屋に安全に入れるかの判断材料としても利用できる」(坪井事業部長)とする。
一方、樹脂成形用金型の挙動をセンシングする「V―モールド」は現在、24年4月のサービス開始を目指して連携先と実証中。金型内部に取り付けた特殊なセンサーが圧力数値の波形を判定する。人工知能(AI)を取り入れた解析ツールも選定中だ。
東海エレクトロニクスはVシリーズを中部圏だけでなく日本全国の製造業に展開する考え。基本は汎用モデルを作り込んだ「パッケージ」として提供するが、顧客側でカスタマイズ(個別対応)する余地も残す。
また、電子帳票記録サービスを展開するシムトップス(東京都品川区)や、コンプレッサーの販売・管理を手がける協伸工業(名古屋市中区)とパートナー契約を締結。Vシリーズを導入した企業の利便性向上に連携して取り組む。
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