東洋インキが「車載リチウム電池材料」世界シェア15%へアクセル、250億円超投資で増産
東洋インキSCホールディングス(HD)が電池材料事業の拡大に向けたアクセルを踏み込む。2026年までに250億円超を投じ、日米中欧でそれぞれ車載リチウムイオン電池(LiB)用カーボンナノチューブ(CNT)分散体の供給体制を確立。同年に売上高400億円超(23年は75億円見込み)、世界シェア15%を目指す。脱炭素や経済安全保障の観点から各地で蓄電池サプライチェーン(供給網)の構築が進む。旺盛な部材需要に技術力と現地生産で対応し、一層のシェア拡大を狙う。
設備投資計画を従来より50億円引き上げた。各地域で現地生産体制を強化し、世界展開を加速させる。欧米に車載LiBの量産拠点を持つ韓国SKオンなどに加え、北米需要拡大で新たに3社からの採用が内定。米国新会社(ケンタッキー州)を通じて新工場を25年に稼働させるなど、北米の生産体制を強化する。
また、現地大手からの採用が内定している中国で設備増強を行う。日本(静岡県富士市)やハンガリーの工場でも需要が拡大していることから、増産や設備投資を計画する。
CNT分散体は電子の伝導性を高める「導電助剤」として使用され、カーボンブラックなど他の導電助剤と比べて少量で導電性能を発揮できる。LiBの高出力・高容量化に寄与することから、車載向けを中心にCNTの採用比率は今後高まるとみられている。
東洋インキSCHDは独自の改質・分散技術でCNTの分散性と導電性を高め、より少量でLiB正極の抵抗値を抑制できる材料を開発。LiBや電気自動車(EV)の高性能化に貢献するとともに、各地のEV供給網に応じて柔軟に製品供給できる点を訴求し、シェア拡大につなげる。
EV化の潮流でLiB市場は車載用途を中心に拡大している。特に高容量が特長のニッケル・コバルト・アルミニウム(NCA)や三元系(NMC)を活物質とする電池は高成長が期待され、CNTはそれらの導電助剤に使用される。
東洋インキSCHDはNCA・三元系のLiBが30年に搭載量ベースで7割以上のシェアを持つと試算し、安定的な部材需要の継続を見込む。高容量化を狙う負極材用のCNT分散体や、全固体電池用分散体の開発にも取り組む。
脱炭素化に加え、経済安保の側面から政府の補助金などの支援体制が整い、EVや蓄電池の供給網構築が米中をはじめ各国で進む。高島悟社長は「この分野で材料メーカーが成功するには、スピードと規模で後れを取らないための経営判断や技術開発などが求められる」とし、グローバルで生産体制の構築を急ぐ。
【関連記事】 EV普及へコストを下げられない企業は市場追放!電池材料メーカー“最後の戦い”