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富士重、生産担当役員が語る「新車台」導入の狙い

笠井雅博取締役専務執行役員に聞く
富士重、生産担当役員が語る「新車台」導入の狙い

笠井氏

 ―新車台「スバル・グローバル・プラットフォーム(SGP)」を新型「インプレッサ」から導入します。
 「SGPによって工場も変わる。全シリーズを相似形にし、お客さまに”上手に“安全を提供できる。現在の車台はより高い衝突安全性が求められる度に部品を追加し、重くなる繰り返しだった。SGPは最初から将来の衝突安全に対応するため、部品点数が少なく、軽い。工程も減る」

 ―新規の設備は。
 「組み立て工程の生産設備はあまり変わらない。軽く、高強度にするため、引張強さ1・2ギガパスカルの超高張力鋼板(ハイテン)材や同1・5ギガパスカルのホットスタンプ材の使用は増えるが、加工時間が長いため最小限に収める。群馬製作所(群馬県太田市)にも必要な設備を導入していく」

 ―SGPによって生産効率をどの程度改善できますか。
 「全車が相似形になれば、工場側は車の図面が届く前に車両設計者の意図を想像できる。幅の広い車は横長の部品が増え、縦に長い車は縦長の部品が増えるという具合だ。工場内の機械設計をどうするかを早い段階で考え、対応しやすい。これから全車にSGPが入る時が楽しみだ」

 ―IoT(モノのインターネット)技術による新たな生産革新が注目されています。
 「生産情報の共有などは行っているが、まだIoTという格好ではない。先行する部品メーカーからみせてもらい、有効と思う部分もあるが、初期投資がかかるという印象だ。まずごく一部のサブラインなどで、お試しをやろうかと考えている。お客さまや生産現場にどんな利点があるか見極めたい」

 ―米国工場は年産約40万台体制へ拡大する中、国内拠点はどう変わりますか。
 「米国の増産準備は順調に進んでいる。群馬製作所はマザー拠点として時代に合わせて変化させたい。20年ごろの環境規制までは鉄の軽量化技術を使い切って対応したいと思うが、その先は新しいチャレンジになる。材料置換が必須となった時にそれを受け入れられるように、事前にいろいろと考えていく」

【記者の目・“チョコッと能増”効果も期待】
 新車台のSGPは衝突安全といった車の性能だけでなく、隠れた”チョコッと能増“の効果も期待できる。全車が相似形になると、生産車の切り替えにかかる時間の短縮や構成部品の生産効率化につながるからだ。吉永泰之社長は米国での増産以外の大幅能増を否定している。供給の逼迫(ひっぱく)する同社にとって、新車台の役割は大きくなりそうだ。
(聞き手=梶原洵子)
日刊工業新聞2016年3月2日 自動車面
日刊工業新聞記者
日刊工業新聞記者
さまざまな形の車を効率的に設計する新手法が自動車業界でブームになっている。代表例は、車をいくつかの塊(モジュール)に切り分けて開発し、モジュールの組み合わせを変えて、大きな車から小さな車まで設計する方法だ。モジュールの切り分け方こそ違えど、独フォルクスワーゲンの「MQB」やトヨタ自動車の「TNGA」などは同じ考えをもとにする。これに比べ車体の基本部分(プラットフォーム=車台)ベースの開発は古く見えるが、富士重工業の手法は「アウトバック」から「インプレッサ」まで【相似形】の車台にすることがミソ。商品戦略に統一性があるからできる手法でもある。すでにマツダが相似形の車台で成功したことからも、富士重工にも向いていそうだ。さらに富士重工は【高い安全レベル】を全車に備えることにも相似形車台を活用するという。統一した個性と生産効率の両立を図っている。 (日刊工業新聞社編集局第一産業部・梶原洵子)

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