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音楽データサイエンス教育で連携…国立音大と滋賀大が開拓する新領域

音楽データサイエンス教育で連携…国立音大と滋賀大が開拓する新領域

協定を結んだ国立音大の梅本学長(左)と滋賀大の竹村学長

国立音楽大学と滋賀大学は、音楽領域のデータサイエンス(DS)の教育・研究に関する連携協定を結んだ。国立音大は4月、日本で初めてDSを主軸に科学的手法で音楽を分析するコースを開講した。滋賀大学が持つDSの知見を、感性的で経験に依存する音楽に掛け合わせることで新領域を開拓する。まず教員が相互の大学で講義をし、交流する。

国立音大には声楽やピアノなどの専門に加え、3年次から副次的に学べる約30のコースがある。2023年春に開講した「音楽DSコース」では、機械学習による音楽レコメンデーションシステムや脳波を使う音楽制作について学ぶ。演奏者の動きを捉えるモーションキャプチャーや音響分析も手がける。

滋賀大DS学部はコールセンターの応答・音やテキストによる感情分析をしている。10月には「チャットGPT」などの生成人工知能(AI)を用いた講義を始め、正解がない分野の探究を深める。

国立音大の梅本実学長は「音楽の感性や演奏の本質に迫り、新たな文化を創造したい」と強調。滋賀大の竹村彰通学長は「スポーツ科学やゲームよりさらに正解のない芸術を通して、人間の本質を知ることにつなげたい」と期待を述べた。

日刊工業新聞 2023年07月31日
山本佳世子
山本佳世子 Yamamoto Kayoko 編集局科学技術部 論説委員兼編集委員
国立音大における科学的研究の例として会見では、打楽器マリンバを専門とする博士学生の研究が紹介された。マリンバは片手2本ずつのマレットを持ち、その持ち方は奏者により違うが、根拠はないのだという。弟子は師の持ち方を伝承するだけで、音楽を学ぶ子どもに対しても説明ができない。そこで自身が持ち方を変え、モーションキャプチャーで演奏法のデータを収集し、音色の変化など音響データと合わせ、科学的に分析することに取り組んでいる。スポーツ科学と似た切り口だと思ったが、竹村滋賀大学長は「スポーツやゲームはある程度、勝ち負けの基準などあるが、芸術はもっとわからない」と説明。「今回は国立音大のデータサイエンスコース設置を知って私から声をかけたが、美術大学でもデータサイエンスコースが出てきたら、また思案するかもしれない」と話していた。

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