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EV廃車時代見据え…JX金属・住友金属・三菱マテリアルがリチウム電池リサイクル事業化へ

EV廃車時代見据え…JX金属・住友金属・三菱マテリアルがリチウム電池リサイクル事業化へ

JX金属サーキュラーソリューションズの高純度金属塩晶析装置

非鉄各社がリチウムイオン電池(LiB)リサイクルの技術開発・検証を加速させている。スマートフォンや家電などの民生用に加え、脱炭素化を背景に普及する電気自動車(EV)の廃車が出始めるとみられる2030年ごろには、車載用LiBのリサイクルニーズも高まると予想される。事業化に向けて、従来から培ってきたリサイクル技術や他社との協業により、各社の強みを発揮できるかが問われている。(狐塚真子)

JX金属は国内外の拠点で取り組みを推進している。技術開発センター(茨城県日立市)で開発した技術の実証の場としての役割を果たすのが、JX金属サーキュラーソリューションズ(福井県敦賀市)だ。長年のLiBリサイクル実証で得られたノウハウを生かし、廃LiB内のレアメタル(希少金属)材料を高収率・高純度で回収する実証試験を行う。

同社では湿式製錬を採用する。熱処理による廃LiBの無害化、破砕、選別の後に行われるが、ここで重要なのが電池粉への不純物の混入削減だ。湿式製錬により電池への利用が可能な高品位の金属塩を取り出すには、電池の基材として用いられる銅やアルミニウムといった不純物を排除する必要がある。

そのため、日立地区では高度な前処理の実現に向けて、小型の前処理試験炉での試験を行う。今後、事業化を見据えてスケールアップした実証試験が必要とみるが、投資時期や設備の規模、導入先については未定だ。

住友金属鉱山は、乾式・湿式製錬を組み合わせた手法をとる。乾式工程での不純物の除去後、湿式製錬でニッケル・コバルトを回収する。乾式工程でアルミなどの不純物を取り除けるため、生産コスト低減につながる。リチウムの水平リサイクル技術についても、22年に関東電化工業との共同開発で実現した。

三菱マテリアルが回収した(左から)炭酸リチウム、硫酸コバルト、硫酸ニッケル

6月には同社のリサイクルニッケル・コバルトを使用した正極活物質が、電池メーカーの実証試験に合格したと他社に先駆けて発表。金属事業本部事業室の真野匠技術担当課長は「信頼性が高まった大きな変化点」と話す。25年度からの次期中期経営期間での年間1万トン規模の処理体制確立に向けて弾みをつける。

三菱マテリアルはエンビプロ・ホールディングス(HD)とタッグを組み、廃電池から取り出した電池粉(ブラックマス)からのレアメタル回収に向けた湿式製錬技術を開発中だ。Eスクラップ(都市鉱山)事業を通じて構築した、世界各国のリサイクル事業者とのつながりを生かしたブラックマスの集荷力のほか、銅製錬事業の副産物である硫酸、排水の機能が、湿式製錬の際に活用できる点を強みと捉える。

今後、廃LiBリサイクルのニーズを踏まえながら事業化を検討する。ブラックマスの処理量は、25年度に年間900トン、27年度に同3000トン、30年度に同6000トンまで拡大する見通しだ。

世界のLiB需要が堅調に拡大すると予想される中、各社の技術・事業基盤を生かしたLiBリサイクル事業の確立が期待される。


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日刊工業新聞 2023年07月24日

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