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業界初…1000ワットの発熱量空冷、住友精密がDC向け冷却器

業界初…1000ワットの発熱量空冷、住友精密がDC向け冷却器

住友精密工業のCPU・GPU用冷却器

住友精密工業はデータセンター(DC)のサーバーなどから生じる最大1000ワットの発熱量を空冷できる冷却器を開発した。空冷式で1000ワットに対応した冷却器は業界初という。400ワット超に必要な水冷に比べポンプなどや保守が不要で、導入と運転コストを低減できる。事業が拡大すれば、製造ラインの増設も検討する。DC市場の高い成長を見込み、2025年度に数億円規模の販売を目指す。

住友精密工業が開発したのはサーバーの中央演算処理装置(CPU)や画像処理半導体(GPU)などから生じる発熱を冷却する装置。高速大容量の第5世代通信(5G)が始まり、サーバーの性能向上によるCPUやGPUの負荷増大で発熱量は増大している。ただ簡易な空冷式で冷却できる上限は400ワットで、それ以上の発熱量に対応するのは水冷式冷却器だけだった。

開発した冷却器は高さ65ミリ×幅70ミリ×奥行き120ミリメートル。突起形状が連続する空気の通路で熱を伝え、冷媒のハイドロフルオロオレフィン(HFO)の相変化により冷却する。突起表面の面積を大きくしたほか、表面形状も伝熱効率を高める工夫を施した。冷媒は自己循環し、電気はHFOを凝縮するファンの駆動だけで済む。空冷だけで1000ワットの冷却を実証したとしている。空冷の技術には熱を制御できなくなる問題もあったが、安定冷却できるという。

同冷却器はサーバーを設置するラックに内蔵する。サイズの拡大や取り付け面の形状に受注生産で応じる。GPU周辺のメモリーや電源との一体冷却、通信基地局の電気機器冷却も可能。価格は受注ごとに個別設定する。

住友精密工業は高速鉄道車両や製造設備用の大型熱交換器で高シェアを握る。だが鉄道車両では、走行風を利用する冷却技術との競合も生じている。そこで熱交換器の技術を広げ、5Gで成長を見込めるDC市場のサーバー用などで新たな需要も創出する。年間数万個製造できるが、事業が伸びれば製造ライン増設も視野に入れる。

日刊工業新聞 2023年07月24日

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