理科教材で進むICT化、最先端「理科室」がすごい
政府による「GIGAスクール構想」で小中学校の児童・生徒1人に1台のタブレット端末が配布され、理科教材の情報通信技術(ICT)化が加速している。内田洋行ではこの流れを受け、今春から関連した理科機器を続々と発売。さらにICTに対応した理科教室の改修を行う事業なども活発化している。(村上授)
「ICT機器でデータを残すことで、過去の振り返りができる」と話すのは、理科機器教材全般を担当する内田洋行の前田君彦課長。2023年4月にそれぞれ「気温・湿度・気圧」「温度」「酸素・二酸化炭素」「音の波長」を計測できるICTセンサーを発売した。
従来、音の波長の計測にはオシロスコープを用いていたが、装置が高価な上に操作が複雑で「利用者が困っていた」(前田課長)。発売した音センサーはマイク近くで音を発生させれば自動でパソコンに波長や振幅のデータが届き、タブレットで保存できる。
温度や酸素・二酸化炭素(CO2)も随時データが入り、ノートに時間と温度や濃度を記録する必要がない。「記録をノートに書き留める作業に集中しなくてもよくなり、実験自体に集中できる」(同)という。ワイヤレスでタブレットに画像が届く顕微鏡も今春発売した。グループ単位で確認できるだけでなく、クラス全体や過去のデータと比較ができる。
5月末には、福井大学教育学部付属義務教育学校(福井市)に内田洋行が提案した新しい理科室も誕生。「改修に伴い、最新の理科室を作りたい」との学校側の要望に合わせ、必要なガスの元栓や水栓は教室の壁側に配置し、机にはキャスターを付けて可動式とすることでさまざまな実験に対応できるようにした。
また、担当した内田洋行の足利昌俊氏は「これまでも理科室をプロデュースしていたが、黒板のない理科室は初めて」と話す。教員は手元のタブレットを使って生徒のタブレットに情報を送る。その情報を教室前方のスクリーンにも投影する。スクリーンを使って等身大の映像を出すことが可能。同校では発展途上国の支援としてアフリカの学校に遠隔授業を実施しており、大きく映すことでより見やすくした。
内田洋行は今後も理科機器のICT製品のさらなる投入や、ICT対応の理科教室の採用拡大を目指していく考えだ。