トヨタが調達価格引き上げ、中小部品メーカーは安堵
トヨタ自動車が2023年10月―24年3月期に、1次取引先からの調達価格を前年同期比で引き上げることが分かった。下請法の対象となる中小企業については原価低減活動に伴う値下げ要請を見送る。一部の大手企業には要請するが、高騰するエネルギー費や資材費分をトヨタが負担するため、全体では実質値上げの見通し。仕入れ先には生産効率改善などで生み出した原資を2次取引先以降への還元や次世代投資に充ててもらいたい考えだ。
20日までに方針を決めた。併せて、1次取引先にコスト上昇にまつわる課題の支援を表明すると同時に、2次取引先以降への取引適正化をあらためて促す書面を送付したと明らかにした。
トヨタは4―9月期(上期)と10―翌3月期(下期)の年2回、1次取引先に対し原価低減活動を踏まえた調達価格の引き下げなどを求める「価格改定」を実施している。23年度上期は一部の大手取引先に限定し、価格改定を実施。中小取引先には要請を見送った。23年度下期もこの方針を継続する。トヨタの1次取引先は400社程度で、うち2割が中小企業だという。
半導体をはじめとした部品不足も収束に向かい、自動車の生産台数は安定傾向にある。一方でエネルギーの高騰が長引き、サプライチェーン(供給網)全体の経営環境を悪化させている。トヨタでは「エネルギー費は過去に類がないレベルで高い水準」との認識でサプライチェーンの支援継続を決めた。
トヨタは取引先支援を強化しており、仕入れ先と一体となって電力使用を抑える取り組みなどを進めている。原価低減活動は競争力確保のため重要な取り組みと位置付け、中小でも継続するが、価格改定を見送ることで、その原資をサプライチェーンの強化だけでなく、電動化など産業構造の変化などに充ててもらいたい考え。エネルギー費用負担を継続するかは状況を見て判断する。
中堅金属部品メーカー幹部は「エネルギー費や資材の価格は依然、高止まりが続いており業績は厳しい」と明かす。今回のトヨタの調達方針は、経営基盤を下支えする効果が見込まれるとして、安堵(あんど)の表情を見せる。また、ある内外装部品メーカー幹部は「人手不足に伴う賃上げの必要性も考慮してもらったようだ」と説明する。別の樹脂加工メーカー首脳は「上期はエネルギー費などが認められた。生産台数も安定しており、助かっている」と話す。
トヨタの価格改定は鉄や樹脂、アルミニウムなど材料の市況変動分と生産性向上による原価低減分から調達品の購入価格を決めている。22年度からは、それまで価格反映のルール適用外だったエネルギー費などのコストを負担している。
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