車載ディスプレーで採用へ、AGCが新技術で反射防止フィルム開発
AGCは反射防止(AR)性能を持ち、白ぼけ感を抑える「低反射スモークAR」を開発した。反射を防ぎながら、自然光などの明るい場所でも高いコントラストを両立する。マイクロ発光ダイオード(LED)ディスプレーや医療用モニターのほか、将来は車載用ディスプレーでの利用拡大を目指す。サンプルの評価を始めており、年内をめどに市場投入を目指す。
モニターなどの反射を抑えるアンチグレア処理は、表面の凹凸加工で光を分散し、画面への映り込みを抑えられる。半面、明るい場所ではコントラストが低く、画面が白くぼやけた見え方になることが課題だった。
AGCの新技術では、アンチグレア基材の上に、特殊なドライコーティングによってAR膜そのものに光の吸収性(スモーク)を付与。高防眩(ぼうげん)での白ぼけ感を抑えながら、反射光を低減する。加えて低反射特性と透過率を制御することで、明所でも高いコントラストを実現する。透過率は用途によって50―85%まで選べる。
同技術はAGCディスプレイグラス米沢(山形県米沢市)と、研究開発拠点であるAGC横浜テクニカルセンター(横浜市鶴見区)との連携により実現した。約7年もの開発期間を要した。
次世代モビリティーでは、画面への映り込みを抑えた高級感のあるディスプレーが求められる。ハイエンドの車載用ARフィルムの市場規模は、2030年に全世界で150億円を超えると予想されている。ディスプレーの大型化や曲面などのデザイン性の向上も見込まれる中、AGCのARフィルムでは施工しやすさも訴求できるとみる。
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日刊工業新聞 2023年07月21日