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MCHを燃料電池で直接発電、早大とENEOSが成功した意義

MCHを燃料電池で直接発電、早大とENEOSが成功した意義

有機ハイドライドからの直接発電により、脱水素設備が不要でロスの少ないエネルギー変換に成功(早大提供)

早稲田大学の福永明彦教授らとENEOSは19日、水素キャリアのメチルシクロヘキサン(MCH)を燃料電池で直接発電することに成功したと発表した。MCHからトルエンへの酸化反応を電極表面で起こして電力を得る。温度などを工夫してMCHが熱分解しない条件を特定した。MCHから水素を取り出して発電機を回すシステムよりも効率的に発電できる可能性がある。

固体酸化物形燃料電池(SOFC)を400―500度Cで運転し、MCHの熱分解を防いだ。温度を上げると電解質の酸化物イオンの伝導性が増し、電流密度が向上する。420度Cでは1平方センチメートル当たり16ミリアンペアで、MCHからトルエンへの酸化反応が進む。生成物はトルエン対ベンゼンが94対6と副生成物は少ない。

490度Cでは電流密度が1平方センチメートル当たり90ミリアンペアに向上する。代わりにジオキサンなどが生成する。MCHの水素は水として排出される。MCHの反応効率は1%台と低いものの、直接発電の糸口をつかんだ。従来は大規模な脱水素設備で水素を生成していた。設備投資を抑え、水素での発電効率を高められる可能性がある。

日刊工業新聞 2023年07月20日

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