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パワー半導体で協業視野…ロームが東芝買収に3000億円

ロームは、日本産業パートナーズ(JIP)などが計画する東芝買収に参画すると発表した。投資ファンドなどに総額3000億円を出資する。東芝とパワー半導体事業での協業を狙っているとみられる。ロームは今回の出資に関して、東芝との協業や経営参画は出資条件になっていないとする一方、将来の協業や連携には関心を持っているとした。今回の買収提案に参画する背景には、世界的なパワー半導体の競争激化がありそうだ。

ローム参画の背景には、次世代半導体の炭化ケイ素(SiC)を中心にパワー半導体でも世界的な投資競争に入った状況がうかがえる。ロームもパワー半導体を成長の柱と位置づけ設備投資を積極化するが、規模の戦いとなった時に単独で生き残るのは難しい。

ロームは最近も宮崎県の太陽電池工場を取得しSiC生産能力を2030年度に21年度の35倍に拡大する計画を打ち出すなど攻勢に出るが、海外の競合企業はそれ以上に投資を拡大している。

例えば、業界首位の独インフィニオンテクノロジーは総額約50億ユーロ(約7200億円)を投じて独ドレスデンに新工場を計画。スイスのSTマイクロエレクトロニクスは中国企業との合弁で、32億ドル(約4460億円)を投じて中国にSiC工場を新設する。

ロームは東芝と組むことで規模の拡大につなげるとともに、経済産業省が経済安全保障の観点で打ち出した半導体投資への支援策を受けやすくなる利点もありそうだ。SiC半導体の投資競争に参画する以上、ロームにとって東芝との協業は避けて通れない。


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日刊工業新聞 2023年07月19日

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