「価格転嫁」不十分…今治造船が船価引き上げ継続
今治造船(愛媛県今治市)の檜垣幸人社長は都内で開いた会見で鋼材などの資機材価格や人件費の上昇を船価に十分反映できておらず一層の値上げが必要との見解を示した。檜垣社長は「慈善事業で赤字を出しながら作るわけにはいかない。インフレに合わせて持続的な船価の底上げをお願いしたい。安定した造船業につながる」と船価上昇を継続する方針を示した。造船業界ではコスト上昇分の価格転嫁が不十分との見方が強まっており、造船最大手の同社も同様の見解を示した形だ。
檜垣社長は資機材や人件費など経営の変動要因が多いとして「(船価が)持続的に上がり、気が付いたら去年より5%上がっているようになれば良い」とイメージを説いた。ドル建てで受注しているため、為替変動を含めた数値だとした。
生産体制については「年間で5%ずつぐらいは上げられるようになりたい」と増産に意欲を示した。2011年に大量建造された船舶が26年以降リプレース期に入ることによる需要拡大を取り込みたい考えだ。
「需要過多で供給が足りない状況はこれからも続く」として、生産体制を長期的な課題と位置付けた。社会全体の人手不足の中で、人員を確保できるかが体制整備のカギになると認識する。
23年3月期連結業績を公表し、受注実績は前期比35隻減の94隻だった。売上高は同3・1%増の3764億円だった。各利益は非公表で、減益だが黒字だと説明した。
日刊工業新聞 2023年07月17日