ニュースイッチ

アスクル、キリンビバレッジなどとEC向け専用商品

メーカーと流通、販路間の価格干渉を減らしウィンーウィンの関係へ
アスクル、キリンビバレッジなどとEC向け専用商品

キリンビバレッジと開発したのは健康麦茶「moogy(ムーギー)」

 アスクルはキリンビバレッジや花王などと共同開発した商品を、ネットの法人向けサービス「アスクル」や一般消費者向けの通販で先行販売を始めた。同社が主導し、日用品や食品などの大手メーカーが参加するロハコECマーケティングラボから生まれた商品。

 キリンビバレッジと開発したのは健康麦茶「moogy(ムーギー)」でパッケージは全16柄。会議などで大勢が集まる場所では誰のボトルか容易に識別できる利点がある。1箱24缶入り。消費税抜き価格は2688円、1缶当たりは375グラムで同112円。また花王と開発したのは限定デザインの消臭剤「リセッシュ=写真」。天然石をイメージしたナチュラルなパッケージで店頭販売用の商品に比べシックでインテリアにとけ込むという。このほか、UCC上島珈琲の「職人の珈琲」などもある。

3年前にオムニ時代を先取り


日刊工業新聞2014年1月7日 


 ネットを活用した商品開発の時代が幕を開ける。実店舗を持つ大手小売業はネットと店舗を融合させ、「いつでも、どこでも、どれだけでも」のオムニチャネル化を推進。実店舗での購買動向を軸にマーケティングを展開し商品づくりに生かす。一方、ネット通販大手はビッグデータを活用し、メーカーと協業した商品開発やマーケティングに乗り出した。実店舗とネットによるモノづくりへのアプローチで、軍配はどちらに上がるか。

 2013年10月にアスクルは提携先のヤフーと協業し、アスクルのサプライヤーなどが参加した「Webマーケティングコンソーシアム」を立ち上げた。都内で開いた設立の会合には大手の日用品メーカーや化粧品メーカー、食品メーカーなど約120社約230人が集まった。

 同コンソーシアムはアスクルのデータと、ヤフーのデータ解析技術を駆使してマーケティングを行う。データをメーカーに提供し、商品開発や販売に共同で取り組む。アスクルの岩田彰一郎社長は「(ネットで)リアル以上の価値をどう出すかが重要」と設立の狙いを明かす。

 これまではネットが万能で、ネットが実店舗を駆逐するという風潮が強かった。だが、ネット上では同じナショナルブランド(NB)商品を扱う限り、価格競争になりがちだ。そこでネット通販大手は購買データを徹底的に活用し、メーカーと組んで独自のマーケティングや商品開発に取り組み始めている。

 すでにアスクルはメーカーと一体となったマーケティングを展開。例えば、ヤフーと共同のショッピングサイト「LOHACO(ロハコ)」では日清食品と組み、「カップカレーライス」をロハコ専用で限定1万食、100円というお試し価格で販売した。

 実際に商品のぺージを見た約3人に1人が購入し、発売から5日間で用意した商品の8割以上を売り上げた。こうしたデータを基に、購買動向を詳細に分析してメーカーにマーケティングデータとして提供した。

 今後、閲覧が多い「出産・育児」、「健康・介護」などをテーマに「一人ひとりへのリーチを検討する」(岩田社長)とネットの強みであるワントゥワンマーケティングを展開する考え。

 ネット通販がネット上のデータを徹底的に活用してマーケティングをメーカーと展開する一方、リアルの大手小売業も実店舗から収集される膨大なデータの活用に向けた整備に入っている。

 セブン&アイ・ホールディングス(HD)は約1000億円を投資して顧客の購買情報や、在庫情報をグループで共有化できるシステム構築に取り組んでいる。グループ企業で扱う300万点という膨大な商品の販売や在庫情報を整備し、どこでどんな商品が購入されたかというデータを分析し、ネットと同様にワントゥワンマーケティングを目指す。

 セブン&アイHDの傘下に入ったニッセンホールディングスの佐村信哉社長は、親会社が蓄積した「膨大な販売データは魅力だった」と明かす。ネット通販もオムニチャネル化を目指すリアルの小売業も突き詰めれば顧客のかゆいところに手が届く品ぞろえや、物流の迅速化が実現できるかどうかの勝負になる。ただ両者とも、その先は独自の商品開発による差別性が問われることになるのは確かだ。

 13年12月にセブン&アイHDは家具・インテリア雑貨専門店「フランフラン」を展開するバルス(東京都渋谷区)に出資すると発表。今後もM&A(合併・買収)攻勢をかける。このM&Aを通じて、どれだけ「新しい商品」を生めるか。ここでも差別化された商品づくりがオムニチャネル化のカギとなる。また、メーカーにとってもネット時代に入り、これまでのマスセールスからチャネル別の商品開発体制やマーケティングが求められると言えそうだ。
(文=森谷信雄)
※肩書きや内容は当時のもの
2016年2月26日 建設・エネルギー・生活2
日刊工業新聞記者
日刊工業新聞記者
食品や日用品メーカーもついに販路別の専用商品づくりが活発化しはじめました。スーパーやコンビニ、ドラッグストアなど各販路すべてに同一商品を流通させるのではなく、販路によって商品を変える。販路間の価格干渉も減りメーカー、流通側ともにウィンウィンの関係です。

編集部のおすすめ