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ローム「SiC半導体」増産へ大きな一歩、出光系から工場取得で生産能力35倍へ

ローム「SiC半導体」増産へ大きな一歩、出光系から工場取得で生産能力35倍へ

ロームが取得予定の宮崎県国富町にあるソーラーフロンティアの工場

ロームは電気自動車(EV)など向けに需要が拡大している炭化ケイ素(SiC)パワー半導体の生産増強へ大きな一歩を踏み出した。12日、出光興産子会社のソーラーフロンティア(東京都千代田区)と、同社の旧国富工場(宮崎県国富町)を10月に取得することで基本合意したと発表。SiC生産拠点として整備し、2024年末までに稼働する。今回の工場取得によりロームはSiC生産能力を30年度に21年度の35倍に拡大する。

旧国富工場は東京ドーム8個分の約40万平方メートルの敷地で、銅・インジウム・セレン(CIS)を材料とする薄膜太陽電池の基幹工場としてソーラーフロンティアが11年に稼働した。しかし、中国の太陽電池メーカーとの価格競争に敗れ、22年に生産を停止していた。この巨大な空き工場を、ロームはSiC半導体を中心に生産能力を増強する。

台湾積体電路製造(TSMC)が熊本県内に建設する新工場の敷地の21万3000平方メートルと比べても規模の大きさが際立つ。ロームでは取得金額や設備導入費用など、総投資額は確定次第公表する。

まず24年末までに既存の生産棟に設備を導入する。既存の建物やクリーンルームを活用することで、SiC増産体制を早期構築できるとしている。物流倉庫や事務所、研究開発施設などは当面ソーラーフロンティアに貸与し、同社が継続利用するが、将来はロームが活用する計画という。

ロームはSiC半導体の増産に向け、21年度から27年度の7年間で約5100億円を投じる計画を立てている。25年度までに同半導体の売上高を従来計画比約18%増の1300億円に引き上げ、世界トップのシェア30%を獲得。27年度には22年度比約9倍となる売上高2700億円を目指している。

松本功ローム社長は「当初から中国EV向けで需要を想定していたが、世界的にEVの計画が動き出し、引き合いが増えている。シェアを伸ばすためにも、それに向けた投資をしないといけない」とし、さらなる生産増強の道を探っていた。

SiC半導体では競合他社の動きも活発化している。国内では富士電機三菱電機が増産計画を相次ぎ公表した。海外でもスイスのSTマイクロエレクトロニクスや独インフィニオンテクノロジーも投資を拡大している。


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日刊工業新聞 2023年07月13日

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