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ホンダ、鈴鹿の生産体制見直し。「軽」に加え小型車も追加へ

北米輸出用「フィット」を寄居から移管。国内工場で補完補完し合う
ホンダ、鈴鹿の生産体制見直し。「軽」に加え小型車も追加へ

八郷社長と鈴鹿製作所

**山根庸史取締役専務執行役員(生産担当)に聞く
 ―グローバルで生産能力の余剰解消が課題になっています。
 「日米欧、中国、アジア・大洋州に分けて対応している。日米欧間では補完体制を強化している。昨年、日本から欧州と北米向けの小型車『フィット』の生産を始め、欧州は『シビック』の5ドア仕様の輸出拠点とする。一方で北米は市場が好調でフル稼働に近い。北米の需要をうまく捉えて日欧の能力を活用する」

 ―日本からの輸出を増やしていますが、国内生産の状況は。
 「欧州と北米向けフィットの生産を寄居工場(埼玉県寄居町)で始め、稼働に偏りがある。寄居工場と狭山工場(同狭山市)はほぼフル稼働で、鈴鹿製作所(三重県鈴鹿市)は空きがある」

 ―国内工場の役割分担は変わりましたか。
 「寄居は小型車、狭山は多品種、鈴鹿は軽自動車とする分担を以前は考えていた。軽は競争が激しくなり、鈴鹿の役割を『軽+小型車』とする。輸出を増やしたいこともあって、輸出用フィットの北米分だけを寄居から鈴鹿に移管する。日米欧間だけでなく国内間の補完も強化する」

 ―北米はフル稼働ですが、能力増強は考えていますか。
 「当面はない。まずは日本の能力を活用する。日本がフル稼働になってから能増を検討する」

 ―中国の状況は。
 「中国は内需の拡大に合わせて現地の能力を増強してきた。その方針は今後も変わらない。今ホンダの販売が好調だが、まだ現地の能力を使い切っていない。能増は様子を見ている」

 ―アジア・大洋州の状況は。
 「タイは市場が低迷し、新工場を建てたばかりで稼働を落としている。アジア・大洋州圏の輸出拡大でうまく埋めたい。インドは需給がマッチしているが、競争が激しくなっている。どこまで販売が伸ばせそうか見極めている段階だ」

 ―モノのインターネット(IoT)の活用は。
 「IoTで何ができるかを検討している。現状は協力メーカーとIoTで踏み込んだ取り組みはしていない」

【記者の目・国内増販への意気込み感じる】
 国内生産の中期見通しを「希望としては90万台前後」とした。内訳は国内販売70万台、輸出20万台。明言を避けたのは国内販売が見通しづらいから。このインタビュー後に八郷隆弘社長が3―4年で90万台半ばにすると発表した。90万台「前後」と「半ば」。重箱の隅をつつくような差だが、生産担当役員の見通しに上乗せしたと考えれば八郷社長の国内増販への意気込みがうかがえる。
(聞き手=池田勝敏)

国内で欧州向けのSUVを新たに生産


 ホンダは24日、会見を開き、八郷隆弘社長が2018年度にも4輪車の国内生産を90万台半ばとする方針を明らかにした。開発体制を改め、電動化技術に経営資源を集中、30年までに電動車両の販売比率を3分の2とする長期目標も示した。八郷社長は「ホンダらしい商品を作る体制を整え、収益性向上とブランド力を強化する」と4輪事業のてこ入れを強調した。

 国内で新たに欧州向けのスポーツ多目的車(SUV)「HR―V」「CR―V」を生産すると発表した。北米向けのCR―Vと主力「シビック」の生産も検討する。八郷社長は「3―4年かけて90万台半ばにしたい」とした。シビックは日本での発売も検討する。

 欧州向けCR―Vはカナダから輸出すると発表していたが、カナダ生産は北米向けに集中する。15年暦年の国内生産は73万台と、01年以降では東日本大震災が起きた11年に次ぐ低水準だった。輸出減と販売低迷で国内生産が落ち込む中で輸出の立て直しを急ぐ。

 一方、八郷社長は「身の丈を超えたスピードで商品投入に追われ、開発現場に負荷がかかっていた」と指摘。小型車とそれ以外、高級車の三つの車格それぞれに開発責任者を設けるなど組織改正を行う。「(研究開発子会社の)本田技術研究所が車作りに集中できる体制にする」(八郷社長)と述べた。

 電動化戦略はプラグインハイブリッド車(PHV)を中心に据える方針を改めて示した。PHVと電気自動車(EV)は北米で18年にも発売し、米ゼネラルモーターズと共同開発を進める燃料電池車(FCV)は20年頃の商品化を目指す。
日刊工業新聞2016年2月25日/26日
明豊
明豊 Ake Yutaka 取締役デジタルメディア事業担当
先日、スズキの湖西工場刷新(軽の競争力強化が目的)のニュースがあった。長い間、国内販売は軽がけん引してきたが、それが様変わりしたことも国内生産に腐心する一つになっている。トヨタのダイハツ完全子会社化もその延長線。あとは三菱自動車か。

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