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日産副社長、国内工場の役割は「補完生産だ!」

松元史明氏(生産担当)インタビュー「16年度は100万台を確実に超える」
日産副社長、国内工場の役割は「補完生産だ!」

日産自動車の松元史明副社長

 ―今春にも北米向けスポーツ多目的車(SUV)『ローグ』を九州工場(福岡県苅田町)で生産します。
 「北米のSUV販売が現地生産で追いつかないほど好調だ。2年前に予想できなかった。市場の変化に応じられる柔軟性があるから九州工場が補完として生かせる」

 ―ローグの生産で九州工場で生産する小型車「ノート」を追浜工場(神奈川県横須賀市)に移管します。
 「九州に劣らないコスト競争力や品質の高さがあり、短期間で移管できるから追浜を活用する」

 ―一時国内生産を九州にシフトし、追浜は稼働が低迷しました。
 「稼働を上げるために新たな車種を生産するわけではない。競争力があるから活用する。追浜の生産量が増える。これを機に再度サプライヤーと一緒に関東圏のモノづくりの競争力を高めたい」

 ―国内の役割は。
 「補完生産だ。日産は世界に多くの工場を持つが、どこかで市場のニーズが変化した時に、別の工場で補完しないといけない。いろいろな車種を作ることができる生産ラインの柔軟性と、それを支える技能者のレベルで日本に勝る拠点はない」

 ―国内生産100万台割れが続いています。
 「16年度は100万台を確実に超える。17年度以降も生産技術やコスト競争力の向上、人材育成のために100万台を維持したい」

 ―能力増強したばかりのブラジル、ロシアなど新興国市場が低迷しています。
 「調達や生産の現地化が重要な時期だ。将来は必ず伸びる市場で回復に備えて高い収益性で生産ができるような体制を整えている。通貨安だから輸出の拡大も考えている。タイには古い工場があって設備更新をしている。稼働が低い今しかできないことをしている」

 ―ルノーと生産方式を共通化しています。
 「モノづくりの価値観と優先順位とルールを共通化している。両社の工場が比較できるようになり、工場間で切磋琢磨(せっさたくま)して競争力を底上げする。相互利用もしやすくなる」

【記者の目・ルノー工場にノウハウ活用】
 ルノーと生産機能の一体化を進めているが、工場の競争力では日産に一日の長がある。昨年仏政府のルノー議決権問題が両社の関係を揺るがしたが、発端はルノーの仏工場を巡る雇用とされる。雇用は工場の競争力と密接に関連する。問題はひとまず事なきを得たが、ルノー工場の競争力を上げるために日産のモノづくり力をもっと活用すべきだろう。
(聞き手=池田勝敏)
日刊工業新聞2016年2月25日 自動車面
明豊
明豊 Ake Yutaka 取締役ブランドコミュニケーション担当
それを言うなら追浜は国内工場の中でも補完だ。工場として競争力があるとは思えないが、かなり以前に「追浜チャレンジ」と題して工場の生産効率を上げる活動を行って、当時、COOだった志賀さん(現日産副会長で産業革新機構のCEO)は手応えを感じていると話していたが、結局有力な車種を引っ張ってくることはできなかった。新たな追浜チャレンジに期待。

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