ミレニアル世代が米国社会を変革させる。大統領選から見えてくるもの

文=大井幸子(国際金融アナリスト兼SAIL社長)

 米国大統領選挙では、州ごとに民主・共和党の候補者指名獲得戦が繰り広げられている。民主党はヒラリー・クリントン対バーニー・サンダーズ、共和党はドナルド・トランプ対テッド・クルーズの戦いとなっている。

なぜサンダーズやトランプにそれほど勢いがあるのか


 日本ではサンダーズやトランプといった候補者が、なぜそれほど勢いづいているのかよく理解できない。サンダーズ氏は74歳、バーモント州出身のユダヤ人で、自らを「社会民主主義者」と位置づけている。

 トランプ氏は69歳、一代で成り上がった不動産王で、メディアへの派手な露出や言動で話題に欠かない。両者ともに強烈な個性の持ち主で、従来の政治的エスタブリッシュメントに属さないという共通点がある。

 一体、米国国内の政治情勢はどうなっているのだろうか。筆者は、21世紀のこれからの米国社会を担う「ミレニアル世代」の動向から目が離せない。

17歳から30歳までの若者の8割が反クリントン


 この世代は1980年代から2000年代初頭に生まれた17歳から30歳までの若者である。この若い世代は民主党の候補予選投票で、男女共に8割が反クリントン票を投じたのだ。

 理由はクリントン氏がかつて上院議員としてイラク戦争容認に票を投じたこと。サンダーズ氏は、これには反対票を投じ、また、全公立大学の無料化と国民皆保険運営を主張しており、若い世代の支持を取り付けている。

 ビル・クリントン大統領時代に労働長官を務めたロバート・ライシュ氏は、若者の動きは格差拡大に起因していると論じている。リーマン・ショック後、貧富の格差は拡大して、実質賃金も減少し、平均的世帯の収入はインフレ調整後で16年前と比べて低くなっている。

スーパーリッチが選挙資金の3分の1を牛耳る


 金融危機を引き起こした投資銀行などの大手金融機関は政府の手厚い救済措置をうけ、最高経営責任者(CEO)の年収は増え続けている。権力は富める者に集中し、2000億円もの資金を必要とする大統領選挙において、わずか400人のスーパーリッチな人々が選挙資金の3分の1を牛耳っているという。政治もメディアも浮世離れしているのだ。

 共和党候補者として次期大統領の期待の高かったジェフ・ブッシュが、選挙戦からリタイアしたばかりだが、一般市民にとってブッシュといっても「自分とは何のつながりも感じられない」遠い存在だったようだ。また、ヒラリー・クリントンに対しても「何か信用できない人」というイメージが強い。

 世の不正義に怒る若い世代は、卒業と同時に就職難と奨学金の返済に四苦八苦しながらも、独立志向が強く、小さな政府を好む傾向がある。彼らが望む社会変革がどのように起こるのか。7月には両党の大統領候補者が決定する。

日刊工業新聞2016年2月26日金融面
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明 豊

明 豊
02月27日
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日本でも今年夏の参院選から選挙権が18歳に引き下げられる。ある調査によると、米国、中国、韓国に比べ日本の高校生は「個人の力では政府の決定に影響を与えられない」と考える割合がダントツで高い。政治体制や民主主義の成り立ち、選挙制度も関係しているかもしれない。でも政治教育が定着すれば、調査結果も変わってくるだろう。政府・与党は、どうせ若者はそれほど投票に行かないだろう、と高をくくっていたら案外、痛い目にあうのではないか。

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