知られざる「マッサン」の甘い物語

ニッカシードル、国産りんごの魅力活かす

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「ニッカシードル・ドライ」㊧と「同スイート」は昨年6月に英国で開かれた品評会「インターナショナル サイダー チャレンジ2014」で銀賞を受賞した
 NHKの連続テレビ小説『マッサン』効果により、売り上げが前年比で大きく伸びたニッカウヰスキーの「竹鶴」ブランドウイスキー。ニッカシードルもマッサン人気で注目度が高まり、2014年売り上げは前年比14%増と好調だ。原材料は主に青森県産のリンゴ。シードルは欧州の発明だが、ニッカでは日本人の味の好みに合うように中身や製法を改良。“日本産の発泡リンゴ酒”として売り上げを伸ばしている。
 
 シードルは、リンゴ果汁のみを発酵させて製造する発泡性のワイン。似たような商品にアップルワインがあるが、こちらはリンゴ原料のワインにさらにリンゴ果汁、ブランデーなどを加えてつくる非発泡性ワインだ。アルコール度数もアップルワインは22%あるのに対し、シードルは2―5%と低い。低アルコール志向の人や女性に受け入れられやすいと言える。

 日本では1954年に青森県弘前市の造り酒屋である日本酒造(現吉井酒造)が、朝日麦酒(現アサヒビール)の山本為三郎社長の支援を受けて「朝日シードル」を設立、56年にシードル製造を開始したのが始まりとされる。その後、山本社長がリンゴ加工に造詣が深いニッカウヰスキーの竹鶴政孝社長に、シードル事業の引き継ぎを依頼。竹鶴社長は将来のシードル製造を前提に、弘前市内にニッカウヰスキー弘前工場を完成した。
 
 ニッカはもともと大日本果汁の社名でスタート、ウイスキーができるまでの商品としてリンゴジュースやゼリー、ワインなどを販売していたため、リンゴ加工技術のノウハウがある。これに朝日シードルが保有していた醸造技術が結びついて、新たな発展の歴史が始まった。朝日シードルの醸造技術にニッカの醸造技術も加わり、品質向上に磨きがかかった。
 
 ニッカのシードルが現在のように熱殺菌していない生タイプになったのは、85年からだ。生食用リンゴの特徴を生かし、日本人の味覚に合う飲みやすいシードルを開発。リンゴ本来の香りを十分、引き出すことをコンセプトに、皮ごと砕いたリンゴから搾った香り高い生ジュースに酵母を加え、4度―8度Cの低温域で発酵させている。酵母は、1000種類近くもの菌の中から選出した。
 
 シードルで使うリンゴの数量は、非公表。青森県産の主力リンゴ品種「ふじ」をはじめ、複数種の生食用リンゴを使用して生産している。品種改良で生食用リンゴの糖度はどんどん甘くなっており、工場ではシードルに合うよう使用品種のバランスを変化させている。シードル向けにリンゴを納める契約農家も存在し、安定供給のため、農家の軒数や栽培面積をさらに増やしていくことが今後の課題だ。
 
 ニッカの「ニッカシードル・ドライ」と「同スイート」は、14年6月に英国ロンドンで開かれた国際シードル品評会「インターナショナル サイダー チャレンジ2014」で、銀賞を受賞した。日本のシードルブランドでは初。リンゴ丸かじりのみずみずしさを生かすため、製造工程で熱を一切加えず、糖分・香料も加えないことでまさにリンゴ100%の味を実現。世界輸出へ向かう日も、そう遠いことではなさそうだ。

日刊工業新聞2015年04月01日 モノづくり面

COMMENT

栗下直也
デジタルメディア局
編集委員

調達関連の記事ですが、不思議とニッカシードルを飲みたくなるのは私だけでしょうか。

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