政府系ファンド、もともとシャープ救済には乗り気ではなかった!?

経産省、“日の丸電機再編”夢かなわず

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産業革新機構の勝又社長(左)と志賀会長兼CEO
 終盤戦までシャープ獲得競争で優位な立場だった政府系ファンドの産業革新機構は、鴻海の支援額積み増しで逆転された。シャープが鴻海と優先的に交渉すると宣言した2月4日以降、状況を覆そうと革新機構の支援案の内容をメディアを使って流布。追加融資枠や、主力行に実質的債権放棄を迫るなどの金額を足せば1兆円となり革新機構案が優れていると主張した。だが、主力行が債権放棄に難色を示した上、シャープは一体運営にこだわったため、敗れた。

 革新機構は当初、シャープ支援に乗り気ではなかった。シャープへの出資は救済色が濃く、「成長事業への投資」という趣旨にそぐわないため、慎重派も多かった。

 東芝の経営危機をきっかけに、経済産業省の意向である家電業界再編という腹案が登場したが、国が描く「日の丸ありき」の大手再編だけでなく、成長が見込める企業への投資に原点回帰する必要に迫られそうだ。

 鴻海、革新機構の提案額は当初の1000億円から、鴻海は6500億円規模、革新機構は金融機関への債権放棄要請を含め1兆円まで積み上がった。今回の買収劇に限ってみると、粘り勝ちしたのはシャープかもしれない。

経産省、国内工場のリストラやJDIへの影響注視


 政府系ファンドの産業革新機構の”限界“が図らずも露呈した。個別企業の救済はせずに成長投資に特化し、ファンドとして一定の投資収益も確保しなければならない。経営不振企業に都合の良い”打ち出の小づち“ではないということが今回のシャープ再建を巡る一連の動きで証明された格好だ。

 台湾の電子機器大手、鴻海の案にない革新機構案の特徴は、東芝をはじめ他社との事業統合を通じてシャープ本体ではなく個別事業ごとの成長を目指す点だった。経済産業省幹部も「シャープという会社がなくなっても仕方ない。大事なのはそれぞれの事業だ」と言い切っていた。そんな中で、一体再建にこだわるシャープ経営陣などが鴻海傘下入りを選んだのも当然の帰結だった。ただ、鴻海の深謀遠慮が読めないため、経産省は神経をとがらせている。

 所管する林幹雄経済産業相は25日の臨時記者会見で「シャープがこれで雇用と地域経済の確保ができると言っているので、外資が来てからのシャープの発展を注視していく」と述べた。革新機構主導で誕生した液晶大手ジャパンディスプレイへの悪影響だけでなく、シャープ国内工場のリストラの可能性など心配事は尽きない。

 世界の家電業界は再編が進んでいる。1月に中国の海爾集団(ハイアール)が米ゼネラル・エレクトリック(GE)の家電事業を買収するなど合従連衡が相次ぐ。

 革新機構が描いていたシャープを軸にした業界再編の構想は消えて、シャープは鴻海傘下で韓国、中国勢とのグローバル競争に挑む道を選択。シャープの決断の正否は遠からず明らかになるだろう。

日刊工業新聞2016年2月26日付の記事から抜粋

COMMENT

明豊
執行役員デジタルメディア局長 DX担当

今回、革新機構は銀行への債権放棄やシャープ経営陣への退陣要求などファンド、資本市場の筋をしっかり通したと感じる。この案件で最終的に利益を得たのは銀行(とくにみずほは鴻海案を推していた)。深読みすれば、財務省VS経産省の構図で、財務省に軍配上がったとも言える。

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