ニッポンが得意のシームレス鋼管、“原油安不況”をどう乗り切るか
エネルギー業界向けの戦略見直し
一層の原油安で鉄鋼大手がシームレス鋼管などエネルギー業界向け高級鋼管の戦略を大きく見直している。新日鉄住金はフランスの鋼管メーカーに追加出資するなど同社との事業連携を強化。数年後の油価回復局面で一気に世界での存在感を高める方針。JFEスチールはより大型の鋼管を製造できるようラインを改造。土木・建築分野へシフトし、エネルギー向けの落ち込みを補う構えだ。
新日鉄住金は仏バローレック(パリ)に約3億5000万ユーロ(約440億円)を出資し、2016年内にも出資比率を1・5%から15%へ引き上げる。17年には持ち分法適用会社化する予定。原油安で業績が悪化し、資金難に陥ったバローレックを救済する格好だが、同時にブラジルでの合弁事業の合理化と、同社の油井管用特殊継手「VAM」の協業範囲拡大までまとめ上げた。
特にVAMはこれまで研究開発に限られていたのを、製品化と顧客サービスまで広げた。太田克彦副社長は「今後は一貫でコミットを深められ、当社の顧客のニーズをダイレクトに吸い上げられる。鋼管の拡販にもつながる」とその意義を強調する。
さらに「厳しい時だったからこそ手を打てた。話し合いの結果、将来の環境認識を共有できた」(太田副社長)と語り、以前からバローレックにこれらの施策を採用するよう働きかけていたと明かす。言い換えれば、原油安による苦境を逆手に取り、自らの業容拡大にうまくつなげたとも言える。
いずれ原油価格が反転し、油井管の需要も回復してくれば、大きな果実を産むのは確実。「それがいつになるかは欲張っていない。何年か先に渡って少しずつ出てくる」(同)と焦ってはいないが、「最終的には3ケタ(数百)億円の収益改善を期待している。15%分の持ち分のリターンもある」と収穫の時を待つ。
JFEは高級鋼管の拠点である知多製造所(愛知県半田市)で、電縫鋼管の製造可能範囲を従来の最大径660ミリメートルから700ミリメートルに拡大した。電縫鋼管としては世界最大。大規模な建物の基礎や山間地で地滑りを防ぐための鋼管杭(くい)として拡販していく方針だ。同所長の斎数正晴専務執行役員は「土木でも14、15年には中部電力の発電所向けに鋼管杭を一気に受注した。こうした民需を確実に取っていけば、官公需が減っても数量を確保できる」と自信をみせる。
中低層建築物の柱に使う角形鋼管でも、最大厚みを22ミリメートルから25ミリメートルに拡大。5階建てまでだった設計範囲が7階建てまで可能になった。JFEホールディングスの岡田伸一副社長は「幸い、国内の(土木建材の)需要は強い。収益確保という意味では知多製造所でも当然、生産のポートフォリオの改善努力をしている」と述べるように、エネルギー向けの余力を振り向けていく方針だ。
(文=大橋修)
新日鉄住金、仏社と「厳しい時だからこそ」連係強化
新日鉄住金は仏バローレック(パリ)に約3億5000万ユーロ(約440億円)を出資し、2016年内にも出資比率を1・5%から15%へ引き上げる。17年には持ち分法適用会社化する予定。原油安で業績が悪化し、資金難に陥ったバローレックを救済する格好だが、同時にブラジルでの合弁事業の合理化と、同社の油井管用特殊継手「VAM」の協業範囲拡大までまとめ上げた。
特にVAMはこれまで研究開発に限られていたのを、製品化と顧客サービスまで広げた。太田克彦副社長は「今後は一貫でコミットを深められ、当社の顧客のニーズをダイレクトに吸い上げられる。鋼管の拡販にもつながる」とその意義を強調する。
さらに「厳しい時だったからこそ手を打てた。話し合いの結果、将来の環境認識を共有できた」(太田副社長)と語り、以前からバローレックにこれらの施策を採用するよう働きかけていたと明かす。言い換えれば、原油安による苦境を逆手に取り、自らの業容拡大にうまくつなげたとも言える。
いずれ原油価格が反転し、油井管の需要も回復してくれば、大きな果実を産むのは確実。「それがいつになるかは欲張っていない。何年か先に渡って少しずつ出てくる」(同)と焦ってはいないが、「最終的には3ケタ(数百)億円の収益改善を期待している。15%分の持ち分のリターンもある」と収穫の時を待つ。
JFEは土木・建築分野へシフト
JFEは高級鋼管の拠点である知多製造所(愛知県半田市)で、電縫鋼管の製造可能範囲を従来の最大径660ミリメートルから700ミリメートルに拡大した。電縫鋼管としては世界最大。大規模な建物の基礎や山間地で地滑りを防ぐための鋼管杭(くい)として拡販していく方針だ。同所長の斎数正晴専務執行役員は「土木でも14、15年には中部電力の発電所向けに鋼管杭を一気に受注した。こうした民需を確実に取っていけば、官公需が減っても数量を確保できる」と自信をみせる。
中低層建築物の柱に使う角形鋼管でも、最大厚みを22ミリメートルから25ミリメートルに拡大。5階建てまでだった設計範囲が7階建てまで可能になった。JFEホールディングスの岡田伸一副社長は「幸い、国内の(土木建材の)需要は強い。収益確保という意味では知多製造所でも当然、生産のポートフォリオの改善努力をしている」と述べるように、エネルギー向けの余力を振り向けていく方針だ。
(文=大橋修)
日刊工業新聞2016年2月24日素材面