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本田技術研究所・日立・IHI・日揮…「核融合発電」知見結集、新研究会が目指すモノ

本田技術研究所・日立・IHI・日揮…「核融合発電」知見結集、新研究会が目指すモノ

核融合実験装置「JT-60SA」

夢のエネルギー「核融合発電」の産業化に向け、43社・機関が参加する任意団体「核融合市場研究会」が始動した。ホンダの研究開発子会社である本田技術研究所(埼玉県和光市)や日立製作所IHI、日揮、住友化学三井物産など業界の垣根を越えて日本企業の知見を結集。日本の強みであるサプライチェーン(供給網)の厚みを生かし、新産業創出に向けた議論を加速する。政府が2023年度内に設立を予定する核融合産業協議会に意見を反映させる。

研究会では核融合研究の最新情報や産業界のニーズを集約する。参加企業からフィードバックを受け、技術的に深掘りする。24年2月末まで開催する見通し。世話人を務める神戸大学大学院科学技術イノベーション研究科の尾崎弘之教授は「世界的には官民協力のパートナーシップが進んでいる。日本にも、その仕組み作りが必要だ」とする。

核融合発電は重水素と三重水素の原子核をプラズマでぶつけて核融合反応を起こし、生じた熱を使い発電する。発電時に二酸化炭素(CO2)を排出しない次世代エネルギーとして期待される。技術的難易度が高く、実用化は50年以降と予想される。

日本は国際プロジェクト「国際熱核融合実験炉(イーター)」に参画するなど研究開発で先行する。重要部品で日本企業の存在感は大きい。プラズマを閉じ込める超電導コイルでは東芝エネルギーシステムズ三菱重工業が、加熱装置では日立製作所やキヤノン電子管デバイス(栃木県大田原市)などが製造を手がけた。

またフジクラや古河電気工業は超電導コイルの材料となる高温超電導(HTS)線材を核融合スタートアップに供給する。日本は大企業やスタートアップ、中小製造業を含め、素材や部材、プラントエンジニアリングなど網羅的なサプライチェーンを持つ。「核融合炉に必要な部品を一国ですべて揃えられるのは日本だけだ」(政府関係者)。政府は4月に核融合発電の実用化に向けた初の国家戦略を策定し、産業化を推進する方針を打ち出した。

現状、核融合発電の開発の主体は民間に移りつつある。米核融合産業協会が22年7月にまとめた報告書では、世界の核融合関連の企業は30社以上存在し、資金調達額は計48億ドル(約6700億円)以上に上る。欧米ではスタートアップが30年代に発電能力を実証するパイロットプラントの建設を目標にする。民間投資はスタートアップに集中している。

米国エネルギー省は5月、核融合スタートアップの米コモンウェルス・フュージョン・システムズや米プリンストン・ステラレーターズなど8社に4600万ドル(約64億円)の助成金を出した。

英国は40年までに発電炉の建設を始める計画。カナダ・ジェネラル・フュージョンとは核融合試験炉を、英ファースト・ライト・フュージョンとは核融合の専用設備でそれぞれ協力する。

気候変動の深刻化で国際的にカーボンニュートラル温室効果ガス排出量実質ゼロ)の重要性が高まる。莫大(ばくだい)なエネルギーを取り出せる核融合発電への期待は膨らむ。関連産業の創出により経済成長にも貢献する。核融合市場研究会の世話人を務める文部科学省の栗原研一技術参与は「日本の核融合サプライチェーンは強力だが、実用化に向けてはさらに多くの企業が核融合開発に参加してもらう必要がある」と話す。

日刊工業新聞 2023年06月19日

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