日本板硝子の真空ガラスが受注倍増、さらなる断熱性向上も
脱炭素化の流れを背景に日本板硝子の断熱二重真空ガラス「スペーシア」の引き合いが高まっている。住宅の省エネ化に向けて国土交通省などが進める「住宅省エネ2023キャンペーン」が始まった3月の受注数量は、前年同月比94%増と拡大。日本政府がカーボンニュートラル(温室効果ガス排出量実質ゼロ)の目標を掲げる30年・50年に向け、今後も継続的に同製品の需要が見込める中、人員増強や新製品の開発も加速する方針だ。
スペーシアは日本板硝子が世界で初めて実用化した断熱真空ガラス。当時、寒さ対策として複層ガラスの利用などが検討されていたが、幅の薄い真空ガラスは既存のサッシのガラスをはめ替えるだけで利用できるという点から、リフォームの需要を見込んで開発・生産を行った。
2枚のガラスの間に真空層を設けることで熱電導を抑え、断熱性能を高められる。現在、基本の「スペーシア」以外にも、遮音や超高断熱など、他の機能を組み合わせた複数のラインアップをそろえている。
同製品は国立環境研究所などの「環境賞」で「50回記念特別賞」も受賞した。22年までの20年間で、約300万平方メートルの出荷実績がある。これは「既存住宅で多く使用される単板ガラスと比較すると、年間当たりの消費エネルギー量が原油換算で約3800万リットル、二酸化炭素(CO2)では約10万トンの削減にもつながる」(建築ガラス事業部門日本統括部開発部の皆合哲男担当部長)計算だ。
足元では脱炭素化を背景に高まる省エネ需要に応えるため、製造・開発体制の強化にも乗り出している。
現在、スペーシアを製造する日本板硝子ビルディングプロダクツ(千葉県市原市)の竜ケ崎センター(茨城県龍ケ崎市)では、従業員の勤務シフトを増やすなど、増産に向けた対応を急ぐ。
並行して進むのが、シリーズ最高ランクの「スーパースペーシア」以上の断熱性を確保する、幅約6ミリメートルの真空ガラスの開発だ。スーパースペーシアは通常の1枚ガラスと比べて約9倍の断熱性を有する点が強みだが、幅が約8ミリメートルのため、新築向けなど用途が限定される点が課題となっていた。
新製品は基本構造を変えることで断熱性の向上が実現できるという。「来春をめどに開発を完了する予定」(皆合担当部長)だ。製造拠点としては、従来品と同様に竜ケ崎センターを想定している。高付加価値製品の拡販により、さらなる収益力向上を実現できるかが問われている。