東京工業大学の八島正知教授らは、化学置換なしで作製できる高プロトン伝導性材料を開発した。バリウム系酸化物の結晶の酸素の位置が空いており、これを起点にプロトンが物質中を流れる。酸素空孔は化学置換で作られてきたが不純物相の原因となる。固体酸化物形燃料電池の動作温度低下につながる。

バリウム・ルテチウム・アルミニウム酸化物を合成した。この物質は結晶構造通りに酸素を配置した場合に比べて、６分の１の酸素原子が欠けて空孔になっている。この酸素空孔に水分子が取り込まれると、酸素原子が引き抜かれる。すると残ったプロトンが物質中を拡散する。

伝導度は世界最高。湿潤空気中で２４時間４００度Ｃに加熱しても分解しなかった。合成段階で酸素空孔を含み、化学置換で酸素を抜く必要がない。製造が容易になり、燃料電池の動作温度を下げられると見込まれる。