大成・清水・鹿島・大林組…ゼネコン大手が新技術、3Dプリント建設が引き出す効果
ゼネコン大手が建設用3次元(3D)プリンターを用い、新たな建設技術の確立を進めている。大成建設は斜面や曲面、凹凸面などにコンクリート構造物をつくる3Dプリンティング技術を開発。鹿島や大林組、清水建設も、3Dプリンター向け材料の開発や構造物への適用に力を入れる。建設現場が慢性的な担い手不足に直面する中、工事の省人化や工期短縮といった効果を引き出す。
大成建設と東レエンジニアリングDソリューションズ(東京都中央区)は、3Dプリンターで任意の形状にコンクリート構造物を構築する技術を開発した。大成建設が蓄積した材料の配合技術と、東レエンジDが持つプリント経路の生成技術を組み合わせた。トンネルのインバート(底盤)施工のほか、建物の直接基礎や擁壁、断面補修などコンクリート工事への適用を想定する。
トンネルのインバート工事では地盤の形状を計測し、プリンターヘッドが形状の変化に追随して移動するためのツールパスを生成。その上で仕切り壁に相当する部分を3Dプリンターで構築し、さらに内部のコンクリートもレール上を移動しながら打設する。同技術の導入により作業員を従来の6人から2人に削減できる。施工の自動化で工期短縮も実現できるという。
一方、清水建設は独自開発した3Dプリンター向けコンクリート「構造用ラクツム」をこのほど構造体に初めて適用した。自社施設に設けた駐車場の膜屋根のうち、外周のアーチ状構造体の一部と柱のコンクリート型枠を作成。建築基準法に基づく国土交通大臣の認定を受けたラクツムの強みとして、通常の確認申請手続きのみでプリント構造体による建築物を完成できる点も訴求していく。
大林組も3Dプリンティング技術の構造物への適用を進める。特殊なモルタルと独自の超高強度繊維補強コンクリート「スリムクリート」で仕上げた「実証棟」を4月に完成。基礎と屋上階の床版を除き、すべて現場の3Dプリンターで作成した。壁は構造体層と断熱層、空調ダクトなどを通す設備層の複層構造とし、躯体工事と同時に各種工事を行うことで工期短縮と省力化の効果を見込んでいる。
これに対し、鹿島は2022年5月に金沢工業大学と共同研究を始動した。3Dデータを直接3Dプリンターに読み込ませることにより、図面作成から部材製作までの作業をデジタルで完結。型枠の組み立てやコンクリートの流し込みなどの作業を置き換え、大幅な省人化につなげる。独自の環境配慮型コンクリート「CO2―SUICOM」を使い、二酸化炭素(CO2)の吸収量が排出量を上回るカーボンネガティブな施工技術の確立も急ぐ。
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