国内最大級の新興支援拠点「プレステーションAi」、運営1年の成果と課題
愛知県とソフトバンクによるスタートアップ支援拠点「プレステーションAi」(名古屋市中村区)の運営が始まって1年が経過した。会員となる企業数は約2倍の176社に増加。製造業が集積する同県を狙って県外から進出してくる企業も増えた。ただ、新規株式公開(IPO)や第三者への売却などのイグジット(出口)は1件のみで小規模だった。愛知県発スタートアップを盛り上げるためにも、次なる成功事例の創出が求められる。(名古屋・永原尚大)
「世界中(の先進事例)を見ても、同じようなことをやっていた。自信がついた」。1周年を記念するパーティーの場で、こう述べた大村秀章愛知県知事は確信めいたものを感じていたようだった。
プレステーションAiは、国内最大級となるスタートアップ支援拠点「ステーションAi」(同昭和区)の2024年10月の開業に先立ち開いた施設。21年に開設し、22年から県とソフトバンクによる運営が始まった。事業計画や資金調達の相談ができたり、起業家同士と経営について情報交換できたりする点が魅力だ。県内企業などとのビジネスマッチングも盛んで、イベントは月平均で約7回開催した。化粧品を手がけるコガネスタジオ(同中区)の植村元社長は「コミュニティーにいることで(事業に役立つ)情報が入ってくる」と語る。
22年10月には初のイグジットが実現。ゲーム対戦競技「eスポーツ」の大会運営システムを手がけるPapillon(パピヨン、同中村区)をカヤックが買収した。買収額は非公表。関係者は「小規模な事例ではあったがイグジットを増やす呼び水としたい」と期待する。
県は29年までに国内外から1000社のスタートアップをステーションAiに集める目標を掲げる。プレステーションAiの23年度の会員企業は約220社に増加する見込みだ。
しかし「入居者の顔ぶれが、変わらない」(起業家)という声も聞かれる。「スピードが足りない。(海外に)負けないようにしなければ」と大村知事は危機感を強める。
新規入居者の増加とともにイグジットなどの輩出増加の加速が課題になりそうだ。