EV・高度化に素材で貢献…住友金属・東レ・AGCが社会実装目指すそれぞれの新技術
非鉄金属、素材各社が電気自動車(EV)や各種最新技術の社会実装を見据え、研究開発を加速させている。非鉄金属業界では、車載向けなどで今後さらに需要が高まるリチウムイオン電池(LiB)のリサイクルに向けた技術開発を推進。素材各社は、省資源化や自動車の安全性・機能向上に資する製品を自動車メーカー各社に訴求する。次世代モビリティーの普及に合わせ、自社の事業拡大を実現できるかが問われている。(狐塚真子)
住友金属鉱山は使用済みLiBに含まれる銅・ニッケルについて、東予工場(愛媛県西条市)の乾式銅製錬工程と、ニッケル工場(同新居浜市)の湿式ニッケル製錬工程を組み合わせ、回収・再資源化を推進。2022年には関東電化工業と共同で、使用済みLiBからリチウムを電池材料として水平リサイクルする技術も実現した。
今後銅・ニッケルのほか、コバルトとリチウムの電池リサイクル専用の実機プラントの稼働を検討。年間1万トン規模の処理体制構築を目指す。
JX金属では、JX金属サーキュラーソリューションズ(福井県敦賀市)を中心に、使用済みLiBのリサイクルを加速。技術開発センター(茨城県日立市)、欧州子会社の3拠点で、事業化に向けた実証を進める。
ベンチスケール設備では、ニッケルとコバルトで95%、リチウムで70%の収率を達成。足元ではリチウムの収率向上に向けた研究開発が進んでいるという。
東レはLiB向けのフィルム集電箔(はく)を開発中。厚さ4マイクロ―6マイクロメートル(マイクロは100万分の1)の基材フィルムにアルミ、銅を蒸着させたもので、東レKPフィルム(兵庫県加古川市)とともに開発を進める。従来の金属箔と比べ薄く、軽量化を図ることができるため、一定の電池容積・重量当たりのエネルギー容量(エネルギー密度)の向上に貢献できるほか、今後EVや電子機器でさらに需要が高まるとみられる金属の省資源化にもつながる。
車両の軽量化につながる製品として、クラレは耐熱性ポリアミド樹脂のジェネスタを訴求する。融点が306度Cと高く、表面実装や高温環境下でも部品強度・性能を担保できるほか、吸水率も低く、高電圧部品や熱マネジメント部品での利用が可能。足元ではタイ・ラヨン県で同樹脂の生産も可能な新プラントを稼働し、生産能力を拡大させている。
AGCは遠赤外線(FIR)カメラ対応のフロントガラスを提案。一般的な車載用ガラスでは不可能な、遠赤外線を透過させる特殊ガラスの利用により、夜間走行時などの安全性向上に寄与する。FIRカメラの設置はコスト面の問題もあるが、「メーカーのニーズにすぐ答えられる環境を整えておく必要がある」(AGC)とみて開発を進める。
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