「空飛ぶクルマ」VRで体験、市民の理解深まるか
大阪府は2025年大阪・関西万博での社会実装を目指す空飛ぶクルマの仮想現実(VR)体験イベントなどで社会受容性向上を図る。7月上旬以降に企業向けや一般市民向けに複数の集客イベントや機体展示イベントなどを実施し、空飛ぶクルマの使い方や未来の社会像などで効果的な情報発信や価値創造を図る。23年度に最大1000万円を投入する。そらとぶタクシー(大阪市住之江区)が韓国メーカーから50機の購入を決めるなど商用運航に向けた企業の動きも加速している。(大阪・市川哲寛)
VR体験では大阪府が制作したVRコンテンツを活用し、コンセプトムービーなどで情報発信する。大阪府内で開催されるほかのイベントとの連携、既存の大規模イベントの大阪への誘致などで効果的な取り組みを検討する。事業や広告での協賛などによる財源確保も視野に入れる。
メディアを活用した情報発信、シンポジウムやセミナーなどの集客イベントでは国内外の空飛ぶクルマの機体やサービスの開発動向、各国の社会実装に向けた動向、国の協議会「空の移動革命に向けた官民協議会」で議論、検討されている内容などを含める方針。
空飛ぶクルマは地域社会や市民生活にとって新しい価値を生む可能性がある。理解を深めてもらうため、複数企画するイベントのうちの1回以上は対面式で開く予定。吉村洋文知事は「実験で終わらせずビジネスとして実用化させる。万博では空港から会場へどんどん飛ばし、多くの人が体験する機会になる」と強調する。
23年度は25年以降の事業立ち上げに向けたビジネス開発や実証、実地検討の期間と位置付けている。事業環境の整備、国や自治体との連携、社会受容性向上などをアクションプランで整理して活動を進めている。
24年度以降も社会受容性向上に向けた取り組みを行う方針。23年度の活動で収集した情報・データや結果、効果を踏まえて24年度以降の取り組み事項などの提言をまとめる。「電気での移動で環境に優しい近未来の大阪に向け、積極的にやる」(吉村知事)と意気込む。
そらとぶタクシーは韓国のPLANA(龍仁市)と意向表明書(LOI)を結び、40年までに6人乗りハイブリッド機を50機購入する。1機の価格は700万ドル(約9億8000万円)。25年に大阪市都心部と観光地や空港を結ぶ路線での商用運航を目指す。
また次世代エアモビリティー(AAM)の開発、運航で覚書を締結。そらとぶタクシーの宝上卓音社長は「アジアを代表するAAM産業のモデルケースを目指してビジネス展開する」と力を込める。
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