電動ショベル開発加速、建機メーカー大手がアピールする技術力
世界的な脱炭素の流れを追い風に、建設機械メーカーの電動ショベル開発が加速している。千葉・幕張メッセで26日まで開催中の「建設・測量生産性向上展」では、大手メーカーが試作機や新機種を展示している。ただ発売時期はまだ先で、現状は各社の技術力アピールの色彩が強い。(編集委員・嶋田歩)
キャタピラージャパン(横浜市西区)は、20トンと2トン級の電動ショベル試作機を日本で初公開した。20トン機種の「320」の稼働時間は8時間で、夜間充電により翌朝使える機動性を訴求する。独自設計の試作バッテリーも展示。モジュラーデザインで、複数のアプリケーションで柔軟構成が可能だ。ストラテジ&テクノロジマネージャーのアンディ・ファン氏は「建機以外の機械にも利用でき、リサイクルにも配慮した」と強調する。
日立建機が展示した5トン電動ショベルは、欧州で2022年6月に発売済み。同社は8トンの電動ショベルを20年に欧州で発売するなど販売実績で先行しており、8トンで累計70台、23年は30台の上乗せを狙う。2トンと13トンの電動ショベルも欧州で発売しており、23年は5トンと合わせ70台の販売を目指す。
住友建機は7・5トンの電動ショベルを昨年に続いて展示したが、「電池を搭載しただけの前機種と違い、試作機だが現場でも十分使えるレベルに仕上がっている」(同社マーケティング本部マーケティング部)。年内にも実際の工事現場で実証試験を行い、改良を図る。
各社とも電動ショベルの国内発売は「未定」としており、実販売は圧倒的に欧州だ。欧州は各国政府が優遇策を図り、充電インフラの整備も進んでいる。
22年にドイツで開催された国際建機見本市「bauma2022」でも、コマツが20トンクラスの電動ショベルを展示するなどメーカーのPR合戦が繰り広げられた。スウェーデンのボルボ建機は欧州と北米で電動ショベルを既に1000台近く販売している。
電動ショベルの価格は、現状ではエンジン車のおおむね3倍以上と高く、その大半は電池関連だ。電池関係の技術開発は急速に進んでおり、欧州と中国、それに日本も開発にしのぎを削っている。「中国の電池はこの先、安全保障上の問題がある。欧米も船便輸送なので時間がかかる。何とか国産電池を使いたい」(住友建機)というのが本音だ。