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ヴァレオ・ジヤトコ・愛三工業…環境負荷低減へしのぎ削る自動車技術の最前線

「人とくるまのテクノロジー展2023」で紹介
ヴァレオ・ジヤトコ・愛三工業…環境負荷低減へしのぎ削る自動車技術の最前線

ヴァレオジャパンはルノーと共同開発する「巻線界磁形同期モーター」を日本で初公開した

脱炭素社会実現に向け、次世代モビリティーの開発が加速している。電気自動車(EV)の航続距離延伸に資する主要部品をはじめ、環境負荷低減につながる技術で各社しのぎを削る。24日、パシフィコ横浜(横浜市西区)で開幕した自動車技術の展示会「人とくるまのテクノロジー展2023」で関連技術・製品の最前線を追った。(特別取材班)

ヴァレオジャパン(東京都渋谷区)は、仏ルノーと開発中のEV駆動用「巻線界磁形同期モーター(EESM)」を日本初公開した。永久磁石同期モーター比で二酸化炭素(CO2)排出量を30%削減できる。ヴァレオが持つ、ステーター(固定子)に角線を巻き密度を高める独自技術で高効率化を実現。「既に欧州メーカーへの採用が決まっている」(ヴァレオジャパン)とし、2027年にドイツで量産を始める計画だ。

ジヤトコは「eアクスル」で2つのコンセプトモデルを世界初展示

シェフラージャパン(横浜市保土ケ谷区)は、電動駆動装置「eアクスル」とサーマルマネジメントシステムを統合した「4in1電動アクスル」を披露。クーラントと冷媒を統合的に制御できる。車両内の全ての冷却回路を効率的に制御し、効果的に排熱を回収。ヒートポンプシステムを介して周辺温度の熱エネルギーを有効活用するため、電費性能が向上し、航続距離を伸ばせる。特に低温環境下での航続距離を飛躍的に向上させた。

ジヤトコはeアクスルで二つのコンセプトモデルを世界初展示。軽自動車などでの搭載を想定する「平行軸タイプ」は、高回転モーターとコンパクトなギアで15インチと小型化。「変速機能付きタイプ」は高い駆動力が求められる商用車などでの使用を想定し、変速機を使うことでユニットの小型化とコスト低減を実現する。ラインアップ拡充で佐藤朋由社長は「電動パワートレーン(駆動装置)においてもトップメーカーを目指す」と意気込む。

次世代製品、実用化見据える

愛三工業はガソリンやバイオ燃料向けに開発した技術を応用し、合成燃料(eフューエル)に対応したポンプモジュールを開発中だ。

導電部に低亜鉛鋼材を採用、またモーターコア部に薄肉成形技術や低膨潤材を採用することで燃料による金属部品の腐食を防止する。すでにバイオ燃料では車両に搭載の実績があるという。

ダイキョーニシカワは植物由来のセルロースナノファイバー(CNF)を活用した部品を展示した。独自の材料処方と混練樹脂(コンパウンド)技術で開発し、現行品比で重量15%減、CO2排出量30%減を実現。R&D本部先行技術開発グループの石田元伸主幹は「低温での成形ができれば、さらに製造工程のCO2排出も抑えられる」とする。エンジニアリングプラスチックの代替材料として、外装部品への採用を狙う。

カーボンニュートラル温室効果ガス排出量実質ゼロ)達成に向け、各社は実用化を見据えた技術のブラッシュアップを重ねる。


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日刊工業新聞 2023年05月25日

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