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電子債権取引、普及阻む「商慣習」の壁

メリット明らかも
 全国銀行協会が運営する電子債権取引システム「でんさいネット」が2013年2月の利用開始から3年が経過した。手形の額面金額に相当する発生記録請求金額累計は15兆円に迫り、利用登録企業数は43万社に達した。大企業のみならず中小企業にも認知度は高まってきているものの、現場での利用が本格化するのはこれからの段階だ。

 でんさいネットはインターネットで債権をやりとりする仕組みで、手形の代替を前提としている。
 
 支払い側の企業は手形の印紙代や事務負担を減らせる。受け取り手の企業もペーパーレス化で管理費用が削減できる。必要な分だけ分割して譲渡や割引も可能だ。
 
 金融機関も手数料収入が入る上に、既存の手形に比べて処理費用が安い。電子債権を担保にした融資にも積極的だ。
 
 利用登録企業は1月統計で日本の企業の1割超の43万396社と右肩上がりだが、実際の利用を示す請求件数は月11万1907件にとどまる。積極的に利用している企業も全ての取引を切り替えられていない場合が大半だ。
 
 「例えば、受取手形を『でんさい』に替えたくても、取引先が『でんさい』に対応していないため切り替えられないケースは少なくない」(関係者)。登録したものの取引先や同業他社の動向を様子見している企業も多い。
 
 「でんさい」は簡単に資金化できるのが長所だ。手形だけでなく、中長期的に売掛金の切り替えも進めば、特性を享受できる企業の裾野も広がる。
 
 利便性は高いものの商慣習という見えない壁が立ちふさがる現状を打破できるか。普及の最大の課題になる。
日刊工業新聞2016年3月22日 金融面
日刊工業新聞記者
日刊工業新聞記者
なんとも日本的な話ですね。メリットがわかっていても切り替えられないとは。ただ、中堅中小ではメリットを感じながらも、人的資源も限られるため、システム切り替え対応などで二の足を踏む企業も少なくないのも事実のようです。資金繰りの円滑化に寄与する利点をこれまで以上に訴求すると同時に金融機関の支援体制の拡充も重要になりそうです。

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