住友電工・古河電工…電線4社の通期予想、3社が増収営業増益の背景
電線4社の2024年3月期連結業績は、3社が増収営業増益となる見通しだ。自動車用ワイヤハーネス(組み電線)の需要復調や、製品への価格転嫁などが寄与する。ただ、ワイヤハーネスや光ファイバーケーブルの足元の動きは鈍い。北米のデータセンター(DC)需要が調整入りしたことに加え、半導体不足による自動車減産の影響が残っているためだ。24年3月期の下期以降にはこうした事業環境が好転するとの見方が強いが、業績の底上げにつなげられるかが試される。
住友電気工業は24年3月期の営業利益を前期比1・4%増の1800億円と見込む。自動車ワイヤハーネスの需要が復調し、電力線も再生可能エネルギー用や電動車用などが伸びる。
半面、好調だったDC用の通信ケーブルが上期に停滞する。電子機器はフレキシブルプリント基板(FPC)の需要が減り、為替の円高による減益も見込む。井上治社長は「通信は米国IT企業の人員削減や、部品不足に備えかなり増えていた市場在庫の影響がある」と説明する。在庫が徐々に縮小すれば下期以降、需要が戻ると予想している。
一方で当期利益は、欧米を中心に上昇する金利による利払い負担増が下押し要因として強まる。設備投資を厳選し負債を抑制するほか、営業債権の回収促進と棚卸し資産削減で資産効率も改善し、高金利の継続に備える。
古河電気工業も24年3月期に増収営業増益を見込む。半導体不足解消による自動車生産の安定化を下期以降とみており、自動車用ワイヤハーネスを中心に売り上げを伸ばす。また販売価格の適正化や製品ミックス改善で生産性を高める。
北米DCの需要調整に対しては、24年3月期の下期以降の回復を見込み、ローラブルリボンケーブルなど付加価値の高い製品を拡販する。森平英也社長は「23年度は一時的な需要調整が生じる見込みだが、中期的には堅調な通信トラフィックの増加に基づき、市場拡大も継続する」と見通す。
SWCC(旧昭和電線ホールディングス)は銅価格上昇を踏まえた製品への価格転嫁が寄与し、24年3月期に増収営業増益を見込む。
一方フジクラは、24年3月期に減収営業減益を予想する。想定よりも為替が円高となっていることや市場環境の調整局面による影響が大きい。ただ売上高や営業利益、経常利益は23年3月期に次いで過去2番目に高くなる見込みだ。
岡田直樹社長は光ケーブル事業について「米巨大IT企業の業績不振でハイパースケール(超大規模)DCは多少投資抑制・在庫調整に入っている。一過性とみており、下期から多少回復するとの見立てだ」と語る。従来の光ケーブルより細径・軽量化を実現した「SWR/WTC」を拡販し、新市場の拡大を目指す。