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光照射でがん細胞死滅、龍谷大など誘起メカニズム解明

龍谷大学の中川優磨大学院生(研究当時)や内田欣吾教授らは、光で可逆的に色が変わる性質を持つジアリールエテンが光の吸収により起こる異性化を経て細胞のデオキシリボ核酸(DNA)の塩基対間に挿入された後に、光照射することでヒトのがん細胞(HeLa細胞)をアポトーシス(細胞死)させることを見いだした。薬剤に光スイッチ機能を追加することで、副作用や毒性が抑えられる薬剤の開発につながることが期待できる。

産業技術総合研究所、山梨大学との共同研究。研究チームはこれまでにジアリールエテン誘導体の存在下で青色光を照射してイヌ腎臓尿細管上皮細胞由来の細胞株を死滅させた実験で、カスパーゼの活性化がアポトーシスに関わっていたことなどを突き止めていた。これらの研究を踏まえてジアリールエテン分子がどのようにアポトーシスに関与するか、HeLA細胞を使って確認することにした。

DNAの塩基対間に挿入されたジアリールエテン分子が光照射を受けると開環・閉環反応を繰り返してDNAの2本鎖の両方を切断。細胞死に至ることがわかった。

成果は米化学会誌ジャーナル・オブ・メディシナル・ケミストリーに掲載された。

日刊工業新聞 2023年05月04日

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