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「半導体装置」業績改善はいつか、メーカー首脳の声

調整局面にある半導体市況は、パソコンやスマートフォンの在庫調整の進展、データセンター(DC)投資の復調などに伴い、今夏にも底打ちするとの見方が強まっている。ただ製造装置メーカーの業績改善のタイミングにはバラつきが生じそうだ。調整局面にあっても原材料や部品の在庫積み増しに動いた企業が先行する公算が大きい。(山田邦和)

市況悪化に伴う投資抑制で、2023年初頭以降、半導体製造装置の需要低迷が鮮明だ。ディスコは23年4―6月期の連結当期利益が前年同期比28%減の116億円に減少する見通し。一方で明るい兆しが出てきた。半導体製造需要に連動する砥石(といし、ブレード)などの消耗品は「需要が底打ちした感覚がある」(ディスコ)。東京エレクトロンの河合利樹社長も「半導体装置市場は23年後半ごろから徐々に回復に向かう」とみる。

装置の需要回復ペースについては「なだらかな『U字型』になる」(野村証券の吉岡篤アナリスト)。過去のこうした局面では装置単価が相対的に低い後工程の装置メーカーの業績が先行して改善し、前工程の装置メーカーの業績回復が遅れ気味になる傾向があった。後工程のダイサーやグラインダーで高シェアを握るディスコがこれに当てはまる。

今期は事情が少し異なる。「(前工程の)東京エレクトロンの連結営業利益も24年1―3月期から前年同期比でプラスに転じるだろう」(吉岡アナリスト)。理由は調達改革だ。市場後退局面でもサプライヤーからの調達を継続することで部品不足を回避し、長納期化を防いでいる。

子会社の東京エレクトロン九州(熊本県合志市)では「ブロックアウト」と呼ばれる生産方式にシフト。サプライヤーの工場で組み立て・出荷する仕組みで、輸送費や時間を削減できる。コロナ禍以前に決めた山梨事業所(山梨県韮崎市)や東北事業所(岩手県奥州市)の新棟建設など増産投資の効果も顕在化する。

半導体需要の拡大に伴い、製造装置メーカー大手5社の棚卸し資産は22年10―12月期に合計1兆円を超え、過去5年間で最大となった。「原材料在庫を意図的に増やしている。回復局面に備えて在庫を厚めに持っておきたい」(ディスコ)。ディスコの棚卸し資産は23年1―3月期で約913億円。19年10―12月期に比べて2倍近くになった。

ただ部品の在庫積み増しにはメーカー間で濃淡がある。アドバンテストは半導体など部材の確保に苦心し、製品納期は一時9―12カ月に延びた。吉田芳明社長は「半導体不足は22年秋ごろをピークに徐々に解消に向かっており、当社の製品納期も6―9カ月に短縮してきている」としながらも、部材需給がタイト化しやすい構造に変わりはないとして「24年3月期中に通常納期に戻るのは難しいだろう」とする。

SCREENホールディングスは原材料価格上昇が利益の下押し要因となっている。22年10―12月期の半導体製造装置事業の売上高営業利益率は18・5%で、同年7―9月期より約3ポイント、前年同期と比べても約2ポイント低下した。原材料価格上昇分の装置価格への転嫁にも取り組むとしているが「半導体業界では装置価格への転嫁は容易ではない」(同社)のが実情だ。

米国主導の対中半導体輸出規制の影響など先読みが難しい状況だが、中長期で半導体の需要拡大は続く見通し。製造装置メーカーの業績は23年度下期から24年度にかけて「K字型」の回復になる可能性はあるが、総じて成長トレンドは維持されそうだ。


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日刊工業新聞 2023年05月04日

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