ニュースイッチ

研究開発経費などの認識、北大・九大など第2Gで悪化顕著

科学技術・学術政策研究所(NISTEP)は、研究開発経費の確保などに関する認識が、北海道大学や九州大学など論文数シェアで5―18位の「研究大学第2グループ(G)」14校において特に悪化していることを明らかにした。評価点は平均よりも高いが、前年の点からの下げ幅が大きい。大学間格差が指摘される中で研究マインドの推移が注視される。

NISTEPは研究者のマインドを計る総合意識調査を2021―25年に継続実施している。日本全体の論文数におけるシェアが0・05%以上ある国公私立181大学の研究者から研究環境や大学経営などへの認識を6段階で評価してもらい、ポイント変換して集計している。同調査では論文数シェアで大学を分類し、第1Gは東京大学などの上位4校、第2Gは14校、第3Gが26校、第4Gは137校。22年の調査では第2Gでの認識悪化が顕著だった。

例えば「研究開発の基盤的経費を十分に確保できているか」の設問では第1Gが10点満点中3・6で対前年0・1ポイント減だったのに対し、第2Gは2・7で0・5ポイント減。第3Gは3・0で0・3ポイント減、第4Gは3・9で0・2ポイント減だった。競争的経費などの確保の設問では第1Gが同5・0で0・1ポイント減、第2Gは4・6で0・5ポイント減、第3Gは4・2で0・4ポイント減、第4Gは4・3で増減なしだった。

設問全体では第1Gが平均よりも評価が大幅に高い。特に「大学経営の分析能力を持っているか」の設問では第1Gは6・8で第2Gは5・3。第1Gと平均値は5・2と1・6点の差がある。

研究力は大学の資金獲得力につながる。大学の論文数シェアは研究者のマインドとも連動する。第1Gと第2Gの計18大学のうち半数は国際卓越研究大学制度に応募した。同制度に選ばれた数校は国から重点投資を受ける。第1Gと第2Gの差はより大きくなる可能性がある。大学ごとの違いや競争はあるものの大学間格差が指摘される中で、どの程度の差が許容されるか推し量る指標として注視される。

日刊工業新聞 2023年04月21日
小寺貴之
小寺貴之 Kodera Takayuki 編集局科学技術部 記者
NISTEP調査は現状を可視化するためのもので、解釈や課題の解決策を考えるのは政策当局になります。大学グループ間で差の大きかった、大学自身の経営分析能力についての設問では100点満点換算で第1―4Gが68点、53点、47点、46点と22点の差がありました。これを大きいと見るのか、こんなものかと見るのか。立場によって変わります。45点以上なら概ね十分、55点なら十分と認識されます。大学には個性があり、抱える課題はそれぞれなので、それぞれに解決策が必要と報告されました。資金面では第2Gのマインド下げ幅が大きく、今後研究大学の中でも明暗が分かれていくのではないか。その兆候が見えているのではないかと思います。この定点調査では2021-25年は同じ研究者に質問し続けるので、24年に稼働する国際卓越研究大学の前後を比較できます。文科省は集中投資も研究基盤の底上げも施策を打ち出してはいます。その効果が観測できるか注視されます。

編集部のおすすめ