日立の自動車機器子会社は世界で存在感を示せるか
日立オートモティブシステムズ、クラリオン両社長インタビュー
**日立オートモティブシステムズ・関秀明社長「M&Aは是々非々で」
―2016年3月期に売上高で初の1兆円に向け、手応えと先の見通しはどうですか。
「12月までの進展はギリギリだが、好調な米国で日本やアジアをカバーし、やりたいと思う。20年度に売上高に対するエレクトロニクス製品の比率を60%(15年度50%)に引き上げたい。主要企業の比率は40―50%のため、60%は当社の特色となる。売上高成長は年7%程度を継続する」
―新興国の戦略は。
「新工場の設置は現在の計画で一巡する。中国は14拠点になり、インド工場も立ち上がった。16年以降に刈り取る。進出地域を拡大するのではなく、ニーズに応じて電動パーキングブレーキのような先進技術を導入するなど内容を変えたい。中国は環境対応の要求が強く、電池などの電動車部品の引き合いが活発だ。早ければ年内の投資判断もある」
―自動運転で開発競争が激化しています。
「富士重工業に採用されているステレオカメラが好評だ。他の方式もあるが、自動運転はクルマを人に近づけるため、両目の方式が素直ではないか。センサーからの情報をもとに走行も含め統合制御を行い、まずレベル2の自動運転レベルを見据えて取り組む。世界で存在感を出すには少なくとも10%以上のシェアは必要。日立グループでの連携に加え、新しいビジネスモデルの模索などで社外パートナーを活用する」
―選択と集中をどう進めますか。
「伝統的な自動車部品事業を売却する海外企業もあるが、続けるからできる革新技術もある。収益率によってすぐに事業入れ替えではない。M&Aは事業シナジーを考えた上で、是々非々でやる」
【記者の目・世界での存在感試される】
日立オートモティブシステムズが売上高1兆円超えに向けて目前となった。規模の差はあるが、クルマを支える幅広い製品群をそろえている意味でデンソーに次ぐ日本発のメガサプライヤーになり得る素地がある。経営体制も事業もグローバル化を進める中、日本の大手サプライヤーとして存在感が試される。
(聞き手=梶原洵子)
―自動運転ブームをどう見ていますか。
「言葉が先行しており、2020年にレベル4の完全自動運転の車が走り回る印象を持つ人もいるが、これは誤解だ。個別の技術は徐々に車に取り入れられ、この方向に向かって技術は進化する。自動駐車も需要がある。ただ、進捗(しんちょく)は個人用か業務用の車かで異なる。個人用はまず安全運転のための車線維持や警告を確実にやることが大事。振動で警告するスピーカーも開発した」
―自動運転には多様な技術が必要です。
「前後左右4台のカメラを使い、周囲を監視・検知する『サラウンドアイ』技術に取り組んでおり、日立グループでさらに高度な自動運転技術の開発に協力している。カメラレンズなど個々の部品のサプライヤーとの協力も重要になる。従来の取引関係よりも踏み込んだ関係にしたい。他社との協力は必要に応じてやる」
―16年の主要市場の見通しは。
「米国は隠れたサブプライムローンが心配だが、市場は1700万台を超えるだろう。日本は需要喚起が難しく、次の消費増税前の駆け込み需要もそれほど多くないのではないか。日本では車の持ち方・あり方も変わってくるかもしれない」
―海外展開は。
「中国は民族系完成車メーカー向けを含めて増えていく。米国も現地2社との商売が活発だ。特に米国では車の後方を監視するカメラ製品など、運転支援関連が伸びている。今、生産拠点を増やす考えはない。先行開発は日本、量産品の開発は中国・廈門(福建省)を中心に行う」
【記者の目・一体感とスピード感を】
カーナビが主体のクラリオンが徐々に変わりつつある。現在大きく伸びるのは得意とするカメラ技術を核にした運転支援関連の製品だ。このほど米車大手からもグローバル車種で大型受注を獲得した。今後、さらに高度な自動運転システムでは日立グループや他社との連携が増えてくる。グローバルでの開発競争が厳しくなる中、一体感とスピード感が問われる。
(聞き手=梶原洵子)
―2016年3月期に売上高で初の1兆円に向け、手応えと先の見通しはどうですか。
「12月までの進展はギリギリだが、好調な米国で日本やアジアをカバーし、やりたいと思う。20年度に売上高に対するエレクトロニクス製品の比率を60%(15年度50%)に引き上げたい。主要企業の比率は40―50%のため、60%は当社の特色となる。売上高成長は年7%程度を継続する」
―新興国の戦略は。
「新工場の設置は現在の計画で一巡する。中国は14拠点になり、インド工場も立ち上がった。16年以降に刈り取る。進出地域を拡大するのではなく、ニーズに応じて電動パーキングブレーキのような先進技術を導入するなど内容を変えたい。中国は環境対応の要求が強く、電池などの電動車部品の引き合いが活発だ。早ければ年内の投資判断もある」
―自動運転で開発競争が激化しています。
「富士重工業に採用されているステレオカメラが好評だ。他の方式もあるが、自動運転はクルマを人に近づけるため、両目の方式が素直ではないか。センサーからの情報をもとに走行も含め統合制御を行い、まずレベル2の自動運転レベルを見据えて取り組む。世界で存在感を出すには少なくとも10%以上のシェアは必要。日立グループでの連携に加え、新しいビジネスモデルの模索などで社外パートナーを活用する」
―選択と集中をどう進めますか。
「伝統的な自動車部品事業を売却する海外企業もあるが、続けるからできる革新技術もある。収益率によってすぐに事業入れ替えではない。M&Aは事業シナジーを考えた上で、是々非々でやる」
【記者の目・世界での存在感試される】
日立オートモティブシステムズが売上高1兆円超えに向けて目前となった。規模の差はあるが、クルマを支える幅広い製品群をそろえている意味でデンソーに次ぐ日本発のメガサプライヤーになり得る素地がある。経営体制も事業もグローバル化を進める中、日本の大手サプライヤーとして存在感が試される。
(聞き手=梶原洵子)
クラリオン・川本英利氏社長「自動運転で他社との協力は必要に応じて」
―自動運転ブームをどう見ていますか。
「言葉が先行しており、2020年にレベル4の完全自動運転の車が走り回る印象を持つ人もいるが、これは誤解だ。個別の技術は徐々に車に取り入れられ、この方向に向かって技術は進化する。自動駐車も需要がある。ただ、進捗(しんちょく)は個人用か業務用の車かで異なる。個人用はまず安全運転のための車線維持や警告を確実にやることが大事。振動で警告するスピーカーも開発した」
―自動運転には多様な技術が必要です。
「前後左右4台のカメラを使い、周囲を監視・検知する『サラウンドアイ』技術に取り組んでおり、日立グループでさらに高度な自動運転技術の開発に協力している。カメラレンズなど個々の部品のサプライヤーとの協力も重要になる。従来の取引関係よりも踏み込んだ関係にしたい。他社との協力は必要に応じてやる」
―16年の主要市場の見通しは。
「米国は隠れたサブプライムローンが心配だが、市場は1700万台を超えるだろう。日本は需要喚起が難しく、次の消費増税前の駆け込み需要もそれほど多くないのではないか。日本では車の持ち方・あり方も変わってくるかもしれない」
―海外展開は。
「中国は民族系完成車メーカー向けを含めて増えていく。米国も現地2社との商売が活発だ。特に米国では車の後方を監視するカメラ製品など、運転支援関連が伸びている。今、生産拠点を増やす考えはない。先行開発は日本、量産品の開発は中国・廈門(福建省)を中心に行う」
【記者の目・一体感とスピード感を】
カーナビが主体のクラリオンが徐々に変わりつつある。現在大きく伸びるのは得意とするカメラ技術を核にした運転支援関連の製品だ。このほど米車大手からもグローバル車種で大型受注を獲得した。今後、さらに高度な自動運転システムでは日立グループや他社との連携が増えてくる。グローバルでの開発競争が厳しくなる中、一体感とスピード感が問われる。
(聞き手=梶原洵子)
日刊工業新聞2016年2月19日 自動車面