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都心で消耗するなら田舎で働こう。「ふるさとテレワーク」実用化へ

企業・自治体からプロジェクト募集
都心で消耗するなら田舎で働こう。「ふるさとテレワーク」実用化へ

米セールスフォース・ドットコムの日本法人(東京都千代田区)は和歌山県白浜町のサテライトオフィスで、本社とテレビ会議を行っている

 総務省は情報通信技術(ICT)を活用し、地方でも主要都市と同じように働ける環境を実現する「ふるさとテレワーク」事業を本格化する。2016年度に企業や地方自治体を事業主体に、取り組みを募集し採択する。1プロジェクト当たり4000万円を上限に導入費用の補助を検討しており、実用レベルを狙い普及を図りたい意向だ。場所を問わない働き方ができるテレワークの特性を引き出し、企業や雇用の地方への流れを促して、地域活性化につなげる。

商談件数、東京より向上


 テレワークは「離れた場所(テレ)」と「働く(ワーク)」をあわせた造語で、高市早苗総務相の重点施策。15年度はふるさとテレワークの地域実証事業を推進し、試験的に取り組んでいる。16年度は国の補助事業として、企業や自治体を事業主体に実用段階のレベルに移っていく。

 この補助事業の予算は6億円。4月に企業や自治体から取り組みを募集し15のプロジェクトを採択する。プロジェクト推進にあたり、テレワーク拠点となるサテライトオフィスの整備に必要なサーバーやソフトウエアの導入費用を支援する。総務省は「3年間の事業として考えている」(情報流通振興課)とし、早期普及に意欲的だ。

 企業のテレワーク導入効果として生産性向上などがある。米セールスフォース・ドットコムの日本法人(東京都千代田区)が和歌山県白浜町で実施している事例はその一つ。クラウドサービスを活用したサテライトオフィスを同町に整備し本社機能の一部を移転した。

 その成果として15年10月の電話営業の商談件数は東京のオフィスより14%増え、契約金額も44%上がった。

 地方ならではの社員間の密な意思疎通や、仕事と私生活の“オン・オフ”を上手に切り替えることができ集中力が高まったためとみる。

 テレワークは「職住接近」も実現できる。首都圏では当たり前の長時間通勤がない。その分、家族と過ごす自由な時間が増えるなど生活も充実したという。

中小企業への普及遅れ


 総務省は16年度に補助事業とあわせて、テレワークの理解を深めることを重要施策と位置づける。企業や自治体にテレワークの専門家を派遣したり、セミナーを開催してテレワークの先進事例を紹介したりする。

 特に「中小企業への普及が遅れている」(情報流通高度化推進室)ため、専門家のアドバイスや事例紹介を通じ「テレワークに適した仕事がない」「情報漏えいが心配」といったテレワーク導入の阻害要因を払拭(ふっしょく)し、中小経営者の意識改革を促していく。

 総務省は多様で柔軟な働き方を推進し、20年までにテレワーク導入企業数を12年比3倍とする政府目標を達成していく考えだ。
(文=清水耕一郎)
日刊工業新聞2016年2月19日 電機・電子部品・情報・通信2面
昆梓紗
昆梓紗 Kon Azusa デジタルメディア局DX編集部 記者
地方ベンチャーを多く取材するたび、本当に豊かな生活を送っているなと実感します。テレワークをするきっかけとしてよく聞いたのが、「趣味のアウトドアを充実させたい」、「自然が豊かなところでのびのび子育てしたい」、でした。

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