黒子からいつ表舞台に? 攻める“鉄鋼・化学IPP”

石炭の大量調達で有利。「我々とはコスト意識が違う」(電力会社関係者)

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神鋼真岡製造所(中央)の隣に建設予定のガス火力発電所(手前=完成予想)
 鉄鋼や化学など重工業の独立系発電事業者(IPP)。新電力(特定規模電気事業者)に進出した日本製紙や王子製紙などを除けば、基本的に卸売りに特化している。小売り市場には参入せず、完全自由化とは一線を画している。IPPを展開する企業の多くは「長期契約に基づく事業なので(完全自由化で)何かが大きく変わることはない」(新日鉄住金首脳)と冷静に受け止めている。

神鋼、異彩放つ


 そうした中で異彩を放つのが神戸製鋼所。発電事業を鉄鋼や非鉄などの素材系事業、油圧ショベルなど機械系事業と並ぶ3本柱の一つに位置付ける。「2019年から新しい発電所が順次立ち上がってくる。このプロジェクトがなければ中計期間を3年にしたかもしれない」。川崎博也社長は16年度に始まる次の中期経営計画の期間を、従来の3年から5年に延ばした一端をこう明かす。

 真岡製造所(栃木県真岡市)にガス火力発電所を建設し、19年後半に1号機、20年前半に2号機が稼働。神戸製鉄所(神戸市灘区)内の神戸発電所でも21―22年に新しい石炭火力が運転を始める。「19年には積み上がる数字が見えてくる」(川崎社長)こともあり、次期中計の目玉の一つに同事業の育成を加えた。特に真岡はよくある遊休地活用ではなく、新たに敷地を購入しての事業参入だ。

 それだけに他のIPPと異なり、完全自由化に対する見方にも力が入る。梅原尚人副社長は「自由化の流れの中で、さらに発電事業に参入できている。当然メリットは大きい」と強調。16年度連結決算からは、鉄鋼事業に含めている電力事業を一つのセグメントとして独立させる。15年度見通しは売上高800億円、経常利益180億円。経常益は主力の鉄鋼はもちろん、非鉄や機械など開示された8セグメントを上回る最大の稼ぎ頭だ。

当面は従来の卸売り契約だが、いずれ・・


 神鋼に限らず、IPPの収益力は電力会社を上回るとされる。少なくとも、これまではコストより安定供給が最優先だった電力会社に比べ、鉄鋼や化学などは本業で国際競争にさらされている分、「IPPの収益力は強い。我々とはコスト意識が違う」(電力会社関係者)ためだ。

 しかも鉄鋼や化学大手は原料として石炭を大量に調達しており、安価に調達する能力にもたけている。IPPは当面、従前の卸売り契約に沿って電力会社への供給が続く。しかし、完全自由化でプレーヤーの勢力図が変われば、競争力のある電源としてその存在感を高めてくることになろう。

日刊工業新聞2016年2月18日1面

COMMENT

村上毅
編集局ニュースセンター
デスク

鉄鋼会社にとってIPP事業は実に“オイシイ”事業だ。多少利益を乗せても、電力会社の発電コストに十分太刀打ちできるという。裏を返せば、安定供給のためとはいえ、やはり電力各社の発電コストは高い。電力小売り全面自由化は、エネルギーを売るだけではなく、作るところのコスト意識にもメスが入ることになる。

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