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東電廃炉…構造物コンクリ消失、ロボット調査が明らかにしたこと

東京電力福島第一原子力発電所1号機のロボット調査で、圧力容器を支える構造物(ペデスタル)のコンクリートが消失し鉄筋がむき出しになっている状況が明らかになった。ペデスタルの一部がむき出し状態にあることは判明していたが、全周に損傷が広がっているとみられる。東電は耐震性評価を急ぐ。評価には数カ月かかる見込みだ。(小寺貴之)

「鉄筋自体には大きな損傷がないことが見てとれる。地震を経てきて変形がないことは安心材料になる」と、福島第一廃炉推進カンパニーの小野明代表は説明する。ロボ調査ではペデスタル内部に入り壁面を撮影した。すると半周強の範囲でコンクリートがなくなり鉄筋がむき出しになっていた。撮影できなかった部分も同様な状況にあると考えられる。

ペデスタル内部には1メートルほどの高さに棚状の堆積物が確認されている。この棚の下部がむき出し状態で、棚の上部はコンクリートが残っていた。ペデスタル底部に落下した燃料デブリの上面が冷やされて固まり、その下で熱などがコンクリートを溶かして流出し、棚状堆積物が残った可能性が考えられている。

耐震性評価は2016年に国際廃炉研究開発機構(IRID)がシミュレーションしている。この時はペデスタル周囲の約4分の1が全損し、残りは壁面の厚さ4分の1が損傷したという仮定で強度を評価した。この条件ではせん断力は基準値の半分になった。

ロボ調査からは鉄筋は残ったものの全周に渡ってコンクリートがなくなったと考えられる。消失した厚みは見積もれていない。シミュレーションの計算自体は軽くても、その条件の精査に時間がかかる。東電の松尾桂介リスクコミュニケーターは「数カ月かかるかもしれない」という。

課題はペデスタルの強度シミュレーションだけで耐震性への答えを出せるかどうかだ。ペデスタルは圧力容器を下から支え、地震の際には上下方向の力を受ける。横方向の力を受けるスタビライザーなどが健全かどうかは確認されていない。圧力容器の破損状況なども含め、調査すべき項目は多々ある。そして東電は圧力容器が沈下しても核燃料の臨界の可能性は極めて小さいとしている。

ロボ調査で新事実が判明すると、調査項目が次々に増える状況にある。内部状況が未解明である以上、仕方ない面がある。柔軟で迅速な調査体制の構築が求められている。

日刊工業新聞 2023年04月06日
小寺貴之
小寺貴之 Kodera Takayuki 編集局科学技術部 記者
ペデスタルの耐震性がなかったとしても再臨界の可能性は低いとされていて、なりより耐震化ができるのかというと難しいものがあります。調査を進めるには圧力容器やスタビライザーを見に行くロボが必要になると思います。格納容器の中でドローンを飛ばしても飛行や通信が難しいので、下からアームを入れて上に伸ばすことになるかと思います。原子力機構の英知事業として東工大が長いワイヤー駆動の軽量アームを開発していました。これを実用レベルに高められれば長く続けてきた廃炉技術研究が実を結ぶといえます。1号機に限らず、デブリ取り出しを始める前にデブリの上の様子を確認しておくのは大切です。長く難しい挑戦になるので産学で成功体験を積んでいきたいところです。

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