Wi-Fi・段差・家具配置…「ロボットフレンドリー」なオフィス見極める
オフィスビルや商業施設でのロボット活用を視野に、ロボットを円滑に動かす「ロボットフレンドリー」な物理環境を構築する動きが出てきた。戸田建設はこのほど建物内外に整備した同一のWi―Fi(ワイファイ)環境でロボットを制御する実証に成功。森トラストや東急コミュニティー(東京都世田谷区)も、ロボットを導入しやすい段差や床材の種類、家具の配置などを見極める試みを加速している。(堀田創平)
戸田建設はアンテナユニットに仮設材の単管パイプを導波管として接続し、建設現場に安定した無線通信環境を構築する独自の「ウェーブガイドLANシステム」を活用。これを建物内外に設置し、同じWi―Fi電波に安定して接続させることでロボットが人とエレベーターに安全に同乗したり、屋外を一緒に移動したりする仕組みを完成した。
実証実験では、ZMP(同文京区)の宅配ロボット「デリロ」を投入。戸田建設の筑波技術研究所本館から別棟まで敷地内を走り、日立ビルシステム(同千代田区)のエレベーターに人と同乗し荷物を届けるまでの流れを問題なくこなせることを確認した。戸田建設新技術・事業化推進部の黒瀬義機部長は「併せて人にとって快適な挙動も追求しないといけない」とする。
一方、ビルオーナーである森トラストも保有・運営施設へのロボット実装を進める。都内のホテルではエレベーターや自動ドア、カーペットの段差などの改修を完了。ここに各種ロボットを導入し、3月まで清掃やルームサービス、アメニティーグッズやリネン品の運搬を担わせた。今後は段差や通路幅、床・壁材や照度などの標準化や、導入効果を検証していく計画だ。
管理会社の東急コミュニティーも、作業環境ごとに最適なロボットを投入することに重きを置く。特に、清掃ロボットは機種ごとに吸塵力や充電・稼働時間が異なる。清掃する床の広さや形はもちろん、場所とロボットの“相性”も重要な要素と捉える。深刻な担い手不足への対応だけでなく、従来と同水準の管理品質を維持することも課題だ。
ロボットフレンドリーな環境づくりは、ゼネコンや不動産大手などで構成する「ロボットフレンドリー施設推進機構」やロボット新戦略に基づき発足した「ロボット革命・産業IoTイニシアティブ協議会」がけん引。各社がこうした枠組みを活用し、建物とロボット双方に求められる仕様の確立や経済性の検証に取り組んでいる。