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天体望遠鏡で日本に攻勢かける仏社と連携強化、ニコンの思惑

天体望遠鏡で日本に攻勢かける仏社と連携強化、ニコンの思惑

ニコンの技術を盛り込んだデジタル天体望遠鏡「eVscope2」

デジタル天体望遠鏡の開発や販売を手がける仏ユニステラは、ニコンとの連携を強化する。このほどニコンがユニステラへの出資を発表。1920年に初めて天体望遠鏡を発売したニコンは、小口径機種や天文台に設置される大型機などを製造してきており、今回の出資でR&D領域における一段の相乗効果を見込む。ユニステラは売上高に占める日本市場の比率を、足元の約10%から将来は20%ほどに引き上げたい考えだ。

ニコンは21年7月にユニステラと共同開発基本契約を締結すると発表し、同年11月には両社の技術を組み合わせた新製品「eVscope2」を発売した経緯がある。今回、ニコンはプライベートファンドのニコン―SBI イノベーション ファンドを通じてユニステラに出資した。出資額や出資比率は明らかにしていない。

ユニステラのデジタル天体望遠鏡は、天体を探す手間を省ける「自律フィールド検出技術」を搭載する。全地球測位システム(GPS)機能を活用し、対象を自動で捉える。また専用のアプリケーションを組み合わせることで、気軽に天体観測が可能。夜空が明るく光害の大きい都市部でも銀河や星雲などを鮮やかに写せる。

こうした特徴から、専門的な知識を持たなくても容易に操作ができるため、利用は広がっている。22年9月にはユニステラのデジタル天体望遠鏡が、米航空宇宙局(NASA)の小惑星の軌道変更実験「DART(ダート)」に貢献した。30人以上の利用者が小惑星「ディモルフォス」へのDART探査機の衝突と、衝突後の小惑星の動きを観測することに成功した。

ユニステラは2015年6月に設立。社員は約50人。ローラン・マルフィジ最高経営責任者(CEO)は天体望遠鏡の日本市場について「大きなポテンシャルを秘めている」と認識する。ニコンとの協業が市場拡大を後押しする可能性もある。

日刊工業新聞 2023年04月12日

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