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コストも温室効果ガスも大幅削減…住友化学が排水処理の微生物剤を開発

コストも温室効果ガスも大幅削減…住友化学が排水処理の微生物剤を開発

最適な微生物剤を使うことで汚泥を大幅に減らす(排水処理設備)

住友化学は、排水処理に関わる温室効果ガス(GHG)排出量やコストを大幅に削減できる微生物剤を開発した。1―2年内の事業化を目指す。排水中の有機物を菌が食べて減らす水処理技術「活性汚泥法」において、水処理後の菌の死がい(汚泥)を食べる微生物。汚泥を減らすことで、汚泥を廃棄する時の乾燥・焼却に使う燃料などのコストやGHG排出量を削減する。

多様な業種の工場で実証試験を行い、有効性を確認した。自社の岐阜プラント(岐阜県安八町)の排水処理で、GHG排出量を従来比15%削減した。化学系排水の処理は比較的難易度が高い。排水の状態で削減効果は異なり、他の業種の排水では数割の汚泥削減や汚泥がほぼゼロになる工場もあり、公共排水にも使えることが分かってきた。

現在、微生物剤の生産規模などの事業化時の詳細を詰めるため、評価作業を行う。岐阜以外の同社国内工場への導入も検討する。

住友化学は、片岡バイオ研究所(神奈川県伊勢原市)が保有する微生物を用いて、片岡バイオと共同で原理解明やスケールアップなどを研究して剤を開発した。この微生物は、死がいの表面にだけ露出する成分(ペプチドグリカン)を食べるため、生きた菌には影響しない。微生物剤は、既存の排水処理槽に投入して使う。追加設備は必要ない。

活性汚泥法は、有機物を含む排水の処理技術として、飲料や食品分野、公共の排水処理施設などで一般的に普及している。


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日刊工業新聞 2023年04月12日

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