核融合炉部品の開発加速、京大発スタートアップが英国・カナダ機関と契約
核融合スタートアップの京都フュージョニアリング(KF、東京都千代田区、長尾昂最高経営責任者〈CEO〉)が核融合炉向けの部品開発を加速している。英国とカナダの研究機関とこのほど共同研究契約を結んだ。核融合発電をめぐっては、米国や英国の核融合スタートアップが2030年代のパイロットプラントの運転を目標に掲げる。KFも部品供給を視野に、同時期の実用化を目指す。(小林健人)
KFは京都大学で研究されてきた核融合技術の実用化に取り組むスタートアップだ。核融合反応を起こすプラズマ制御ではなく、エネルギーを取り出したり、プラズマを加熱する機器や部品を手がける。
今回、核融合反応によって生じる中性子を受け止める「ブランケット」の開発で英国原子力公社(UKAEA)と共同研究契約を結んだ。UKAEAが運用する実証施設で、KFが開発する炭化ケイ素(SiC)複合材を採用したブランケットが中性子を受け止めた際の構造変化を検証する予定。
SiC複合材のブランケットは、現在国際プロジェクトの「イーター」などで採用される材料よりも高温に対応できる。実用化できれば、核融合発電のエネルギー効率を高めることにつながる。中原大輔経営企画部部長は「海外の核融合スタートアップとも話をしており、開発への期待を受けている」と話す。
またKFは核融合炉の安定運転に必要な燃料サイクルシステムの開発に向け、カナダ原子力研究所と連携して性能検証を進める。
燃料サイクルシステムは、燃料である三重水素を製造したり、回収する役割を持つ。三重水素は自然界にはほとんど存在しないため、燃料サイクルシステムを使い、核融合炉自身で燃料を作り、供給しなければならない。共同研究では、プラズマや不純物中に核融合反応をせずに残った三重水素を分離して回収することなどを想定した検証を行う予定。カナダ原子力研究所が持つ三重水素を使う。放射性物質である三重水素の取り扱いは難しく、実験できる場所が限られていた。
KFは24年中に自社の核融合模擬プラントを建設する計画。核融合反応は起こさず、模擬的に作った熱で発電し、部品の性能を検証する。中原経営企画部部長は「日本と海外の同時進行で開発を前に進める」と力を込める。