エプソンが複合機で“インクで稼ぐ”常識覆す

オフィス向けで定額制の新しいモデル

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インクジェット方式でオフィス向け事務機市場に乗り込む
 2014年5月、セイコーエプソンは満を持してオフィス向けインクジェット複合機の市場投入を発表した。機器を貸与し月額5000円(消費税抜き)からの定額制で印刷できる「スマートチャージ」という新たなビジネスモデル。圧倒的な低コストを謳い、レーザー一色のオフィス市場で勢力図を塗り替えようと意気軒高だ。

 インクジェットプリンターでは家庭用の「カラリオ」が広く認知されるが、個人向け市場は年賀状や写真印刷の減少などで年々縮小。レーザープリンターが大半を占めるオフィス市場の攻略に向かうのは、必然だった。

 スマートチャージの披露から9カ月。「販路開拓がなかなか進まない」―。販売担当の役員は、最初にぶち当たった壁の大きさを嘆いていた。オフィス向け複合機市場は、レーザープリンター各社が強固なビジネス基盤を築き上げている。販売を担う代理店はインクジェット方式の複合機が本当に市場で普及するのか、成長性の判断を迷っていた。

 プリンター事業担当の常務の久保田孝一は「事業拡大には時間がかかりそうだ」と漏らす。ただ社長の碓井稔は「顧客のニーズやメリットに見合った商品なら、絶対に伸びる」との信念を崩さない。その背景には、新興国向けの大容量インクタンクモデルプリンターの成功体験がある。

 10年にインドネシアで最初に発売した大容量インクタンクモデルは、プリンターメーカーの常識である「インクで稼ぐ」ビジネスモデルを覆した。

 インク交換の手間を省く代わりに本体価格を引き上げ、販売時点で利益の出る仕組みを構築。「安いものしか売れない」とされてきた新興国だったが、その手軽さなどが受け販売は右肩上がり。販売地域を順調に拡大し欧米や日本での展開も始め、販売台数は前年度比20%以上で成長する。「本当にいいと思ってもらえるものは、売れるんだよ」。碓井は笑う。

 「お客さまが本当に欲しいものは売れる」。その手応えを確かなものにしたエプソンは、スマートチャージの展開にも期待を寄せる。今では生産性を高めた機種などを拡充し、一通りの製品をそろえた。その後の販路開拓も徐々に進み、ほぼ計画通りだ。海外でも30―40カ国で販売を始め、16年度もその数を増やす計画だ。

 久保田は「25年までにはオフィス向けモデルで、現状20%の販売台数比率を50%まで伸ばしたい」と夢を描く。大容量インクタンクモデルに次ぐビジネスモデル変革への挑戦は、始まったばかりだ。
(敬称略)

COMMENT

明豊
デジタルメディア局
局長

2017年3月期から始める次期中期経営計画で、営業利益率10%以上を掲げる方針のエプソン。好調な新興国向けを織り込んでもこの1年の株価は下降曲線をたどっている。オフィス主力機で年40万台規模といわれる国内市場でもどこまでシェアを伸ばせるか。

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