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賞金60万アメリカドル!世界最大級のサスティナビリティ賞受付中!

賞金60万アメリカドル!世界最大級のサスティナビリティ賞受付中!

2023年度の「ザーイド・サスティナビリティ賞」授賞式の様子(写真:ZSP提供)

「サスティナビリティ」という言葉が、今ではすっかり市民権を得た。

日本語に直訳すると「持続可能性」であり、人間の生活や環境が多様性と生産性を失わずに、長く継続できることを指す。代表的な活動がSDGs(持続可能な開発目標)だろう。2015年の国連サミットで加盟国全回一致で採択され、「サスティナビリティ」の概念が一気に広がったきっかけと言える。しかしその10年以上前から「サスティナビリティ」にいち早く注目した国がある。

それがアラブ首長国連邦(UAE)だ。中東の産油国として知られるが、限りある資源に依存することなく、再生可能なエネルギーの開発に積極的に努めている。たとえば、06年から国営のマスダール社が二酸化炭素(CO2)排出ゼロのスマートシティの建設を開始。08年から”UAE建国の父”シェイク・ザーイド・ビン・スルタン・アル・ナヒヤーン(シェイク・ザーイド氏)の遺志を受け継いだ「ザーイド・サスティナビリティ賞」(ZSP)という賞を、マスダール社が運営している。以来、世界中にサスティナビリティの重要性を喧伝しているー。

といっても、日本ではまだまだZSPにピンとこない人が多い。しかし、この賞に応募することで、世界的に自分の組織や学校の存在が注目されるチャンスが広がる。もちろん日本からも応募が可能だ。そこで同賞のディレクターであるラムヤ・ファウワズ博士に、これがどんな賞であり、世界にどんな影響を与えたか、そしてどのようなプロセスで応募できるかを聞いた。

ラムヤ・ファウヤズ博士。アブダビ・サスティナビリティ・ウィークも監督する(写真:ZSP提供)

-UAE を建国したシェイク・ザーイド氏の遺志を継いだ賞ということですが、どういった点を継承しているのですか。
 彼はとても先見性のあるリーダーでした。持続可能な開発と環境保全の重要性を、かなり前から国内外に向けて説いていたのです。ZSPはサスティナビリティの推進に大きく貢献した中小企業、非営利団体(NPO)、高校を表彰し、若い世代がより持続可能な世界に向けて行動を起こすきっかけになっています。

-ZSPには6つの部門があります。具体的に教えてください。
 応募者は提供しているソリューションについて、6つの部門からひとつを選びます。質の高い最新の医療サービスを実現する「保健」、安全で栄養価の高い食糧を提供する「食糧」、手頃な価格でエネルギーを安定的に供給する「エネルギー」、安全で安価な飲料水を提供する「水資源」部門があります。

そして今年度から新たに「気候変動対策」部門を新設しました。これは気候変動に対処し、天然資源を守るための革新的なソリューションを持つ組織に賞を授与します。この部門は、23年にUAEで開催される「COP28」(気候変動枠組条約締結国会議、11月30日-12月12日開催予定)を視野に入れた取り組みで、今年度の授賞式も同会議の開催中に行われます。また6つ目は「グローバル・ハイスクール」という部門です。「保健」「食糧」「エネルギー」「水資源」「気候変動対策」の5部門のひとつ、または複数の部門を組み合わせたプロジェクトのアイデアを持ち、その具体的な計画を示すことができる高校が応募できます。

ZSPの6部門。グローバル・ハイスクールの地理的地域:南北アメリカ、サハラ以南のアフリカ、中東および北アフリカ、欧州および中央アジア、南アジア、東アジアと太平洋地域

ーZSPがスタートして15年が経過しました。実際に国際社会のサスティナビリティに対する関心の高まりに貢献したのでしょうか。
 それはもちろんです。過去15 年間、ZSPは時代と共に進化し続け、その対象範囲を広げ、革新的な取り組みを行う多くの人々を評価してきました。これまで、のべ106の組織・団体に賞を授与し、受賞者が実施したソリューションにより、ベトナム、ネパール、スーダン、エチオピア、モルジブ、ツバルなど150カ国3億7800万人以上に恩恵をもたらしました。ZSPの取り組みを通じて、サスティナビリティに関する認識と関心を高めています。それゆえ、世界中のサスティビリティソリューションの開発と進歩を後押ししている自負があります。毎年何千もの応募があり、昨年は過去最高の152カ国・4538件もの応募を受け付けました。

-ZSPはさらに発展的な取り組みも行なっていると聞いています。それはどのような活動でしょう。
 「ビヨンド2020イニシアチブ」という取り組みを19年にUAEで開始しました。これはZSPと複数の有力組織が提携して、受賞者とファイナリストのソリューションをさらに加速し可能性を広げるものです。さらにはテック・フォー・グッド(世界の最も難しい課題を解決するデジタルテクノロジー)も提供しています。既に19万2800人以上の人々の生活に良い影響を与えています。

-どんな企業や団体、高校がZSPに応募できるのでしょうか。
 「保健」「食糧」「エネルギー」「水資源」「気候変動対策」は各国が定める中小企業(日本の場合、政府が定める中小企業:https://www.chusho.meti.go.jp/soshiki/teigi.html)、NPOが対象です。受賞は各部門につき1組織のみですが、各ファイナリスト3団体はUAEの首都アブダビで開催される授賞式に参加できます。「グローバル・ハイスクール」はあくまでも学生が主体のプロジェクトであり、提案するソリューションに取り組むことでどのように生徒がスキルアップするかが課題になります。応募学生が卒業後も活動を継続することが条件で、世界6つの地域で、それぞれの地域から選出された6校に授与されます。

-賞金も60万アメリカドル(約7800万円)、グローバル・ハイスクールは1校最大10万アメリカドル(約1300万円)と非常に高額なのも魅力ですね。受賞するポイントがあれば教えてください。
 「保健」「食糧」「エネルギー」「水資源」「気候変動対策」の評価基準は「イノベーション」(革新性)が40%、「インパクト」(他者に与える影響力)が30%、「インスピレーション」(創造性、意志力、人を巻き込む力)が30%となります。

たとえば「イノベーション」は、自分のアイデアが他のソリューションと比べてどこがユニークか、また、そのソリューションの技術的・ビジネスモデル的なイノベーションは何かを挙げてください。

「インパクト」は人々の生活の質に対する具体的な成果やポジティブな影響は何か。さらには直接的・間接的にどのような人が恩恵を受けるかを明確にし、クリーンエネルギーの生成・回避されたCO2・節約された水の量など具体的な数値も挙げるといいでしょう。

2023年度に「エネルギー」部門を受賞した、ヨルダンのニューロテック社のソリューション(写真:ZSP提供)

-応募者には参考になりますね。さらに「グローバル・ハイスクール」の受賞ポイントは何でしょう。
 評価基準は「イノベーション」が40%、「インパクト」が30%、「インスピレーション」が30%と、他の5部門と同じです。 「イノベーション」としては創意工夫のポイントや、プロジェクトが実行されることで、より多くの学生が安価で質のいい教育を受けられることを明確にしてください。

「インパクト」では、プロジェクトの具体的なサスティナビリティの成果、それが特定のスキルをどのように向上するかを明らかにしましょう。

「インスピレーション」は、プロジェクト終了後も、後に続く学生のやる気をサポートする計画であることが必須です。

-ZSPは、特に若い世代のイノベーションと起業家精神を奨励し支援するものと思いますが、いかがですか。
 その通りです。若者たちが地域社会を支えるために積極的な役割を果たし、サスティナビリティリーダーに育つこともZSPの大きな役割です。これまで世界中の46の高校を対象に授与しています。受賞校の生徒たちが実行したプロジェクトによって、合計720万kwhの電力を生み、5700トンのCO2を削減。地域社会の42万7408人にプラスの影響を与えました。これが、ZSPが世界レベルで若い世代のサスティビリティを支持している大きな理由です。

-22年度には、軽井沢のインターナショナルスクール「UWC ISAK ジャパン」が「グローバル・ハイスクール」部門を受賞しました。彼らはどんなプロジェクトを提案したのでしょう。
 バイオマスボイラー、ソーラーパネル、雨水収集システムなどの再生可能な資源を導入し、同校を日本で最もサスティナビリティな学校にすることを目指しました。これによりCO2排出の大幅な削減、エネルギー効率の向上、オーガニックで健康な食材の生産などに寄与したのです。

UWC ISAK ジャパンの生徒たち(写真:ZSP提供)

-応募方法はポータルサイトで質問に答える形式で、約1分間のプレゼンビデオを作成し、補足資料を添付するというものです。全て英語なので、多くの日本人にとって不利かと思われますが……。
 英語の文章の”上手い下手”は評価に影響しませんので、英語が母語でなくとも応募可能です。翻訳ツールを利用したり、英語が得意な人にチェックを受けたりすることをお勧めします。質問に回答する形式なので、シンプルで明確な言葉を使い、理解しにくい複雑な専門用語の使用はしないほうがいいですね。何より言葉の壁で応募を断念してほしくないです。

-昨年は「水資源」でセイスイ工業株式会社、「保健」でオリィ研究所株式会社が各部門のファイナリスト3社の中に残りました。サスティナビリティと日本の親和性はありますか。
 日本は古くから自然を大切にし、環境を保全する文化があります。また、30年までに国内の電力構成に占める再生可能エネルギーの割合を、36-38%にする野心的な目標を設定しています。日本はサスティナビリティの推進に向けて大きな一歩を踏み出しているので、応募にとても期待しています。

昨年のファイナリストに残ったセイスイ工業株式会社 井本謙一社長のコメント
「有機汚泥量を10分の1に削減するなど、仮設水処理を専門に行う弊社は、事業を行えば行うほど、気候変動やCO2削減などに貢献できます。だから、ZSPの『水資源』部門にドンピシャだと思い応募したのです。弊社はスタンダードな水処理方法を採用していますが、他社と比べてスピード感があり、事故や災害時に迅速に対応できるのが強み。この点が評価されたのかなと思います。英語の応募はハードルが高かったのですが、語学に堪能なライターさんに頼りながらエントリーしました。ファイナリストとしてUAEの授賞式に出向き、地元の有力な会社の社長と交流するなど、とても貴重な体験ができました。水問題の解決は世界中で必要とされています。この経験を生かし、今後水処理で困っている国の技術者がいれば弊社で迎えいれ、ノウハウを教えることができたらと思います。ZSPに応募したからこそのチャレンジですし、これもまたサスティナビリティの一環ですね」
授賞式でUAEを訪れた時の井本社長(写真:セイスイ工業株式会社提供)

-すでに応募受付が始まっていますが、どんな組織や学校にエントリーしてほしいですか。
 英語の壁に臆さず、チャレンジ精神旺盛な中小企業やNPO、よりサスティナブルな未来のビジョンを実現する高校生たちです。ご応募をお待ちしています。

ZSPの公式HP
 https://entry.zayedsustainabilityprize.com/ZSPHome

ーさらなる必勝ポイントー
●該当する部門を一つ選んで応募。複数の部門分野にまたがるソリューションであっても、最も該当すると思われる部門を一つ選ぶこと。
●ソリューション内容とその影響力がわかるよう、質問に対してできるだけ簡潔で明確に答えること。影響力を説明する際に、直接・間接両方に与える受益者への影響を、数字も含めてそれぞれ分けて書くこと。
●ビデオと添付資料(5つまで)で、質問項目では伝えきれなかった内容を補足可能。 ソリューション内容がよりわかりやすくなるよう、画像や動画も活用すべし。
●特許について質問している欄もあるが、有無は評価に影響しない。
●期限は23 年5月23日(火)。なるべく早く提出した方がベター(締め切り2週間前になると応募が殺到し、質問やポータルサイト上の問題などを問い合わせても対応に時間がかかるため)
応募概要ページで紹介している内容、「よくある質問」、「チュートリアル動画(アカウント作成方法を紹介)」 、「過去の受賞者応募内容サンプル」をよく参照のこと。オフラインでも作業できるように質問項目もダウンロード可。ただし、実際の応募はポータルサイト上で行うこと。


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