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デジタル技術でモノづくり進化、日本ガイシが活用する「サイバーフィジカルシステム」の全容

デジタル技術でモノづくり進化、日本ガイシが活用する「サイバーフィジカルシステム」の全容

新しく導入する工程や設備を仮想空間上で再現して最適化する「CPS」の活用を始める

日本ガイシは仮想空間上に生産ラインを再現する「デジタルツイン」技術を使い、新設する工程や導入設備の設計・配置を最適化する「サイバーフィジカルシステム(CPS)」の活用を始める。2023年度以降に国内外の工場で新設する工程・導入設備にCPSを使う。新しい生産体制の構築に必要な期間を現状比4割減らし、新製品発売までの時間を短縮する。デジタル技術でモノづくりを進化させる先行事例の一つになりそうだ。

工程や設備の新規導入では、設計図に基づいて製作・調達した機械を現場に配置し、実機で試運転による調整を繰り返して稼働を安定させる流れが一般的。ここでCPSを活用すると、多くの調整が仮想空間上で完結するため、導入に要する期間を短縮できる。

自動車向けの排ガス浄化装置を生産する海外工場に導入する搬送ラインでCPSを試したところ、現場での試運転と調整に要する期間が従来比43%減の60日間に短縮した。例えば、入念にシミュレーションや準備をしていても、実際に現場に置いて初めて配置変更の必要に気付くケースはある。CPSにより、設備導入時に発生しがちなトラブルを未然に抑制できる。

CPSの導入に当たり、3次元CADやロボットシミュレーションなどのソフトウエアのデータを連携させるシステムを構築した。CPSを活用できるチームリーダーも育成する。23年度中に8人育て、24年度には16人に倍増する。

日本ガイシは排ガス浄化装置を主力とするが、内燃機関の減少を踏まえて半導体や電子部品材料の売上高を伸ばす考え。新材料の探索期間を10分の1に圧縮する狙いで開発中のマテリアルズ・インフォマティクス(MI)と組み合わせ、新たなニーズを迅速に取り込める製品開発・販売体制を構築する計画だ。

日刊工業新聞 2023年04月03日

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