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「100点だと思ったら陳腐化する。常に100点を」(JR九州社長)

青柳俊彦氏インタビュー。今秋の上場を控え、豪華列車のブランドに磨きかける
「100点だと思ったら陳腐化する。常に100点を」(JR九州社長)

青柳社長と「ななつ星」

 JR九州は今秋にも株式を上場して完全民営化を果たす。鉄道事業は厳しい環境ながらも収支改善を進め、九州新幹線や豪華クルーズ列車「ななつ星in九州」を成長事業に育ててきた。一方で駅ビルやホテルなど鉄道以外の事業では攻めの姿勢が目立つ。「国鉄分割民営化」による発足以来の変革を迎える青柳俊彦社長に課題や取り組みを聞いた。

 ―鉄道事業の収支改善が大きな課題です。
 「九州新幹線など増えている部分を確実に増やす。その一つの方法は切符を購入しやすくすること。ネットで購入すれは安くなる仕掛けをつくったり、スマートフォンでの予約や購入をしやすくしたりする。一方の効率化では駅体制や就業時間の見直しを進める」

 ―効率化の一環で駅の無人化に取り組んでいます。
 「利便性を図りつつ、経費を削減できる『スマートサポートステーション』を拡大する。インターホンとカメラを使えば『ICカードをもっと左にかざして』など、そこに人がいるかのように対応できる。カメラの技術が向上し、死角が減った。駅周辺の防犯にもつながっている」

 ―安全対策にはどう取り組みますか。
 「保守管理での機械化、ロボット化を急がなければならない。協力会社の高齢化が進んでおり、人材確保が難しくなることへの対応という面もある。線路の保守作業車を高性能化、線路補修や道床交換を機械化したい」

 ―非鉄道事業の拡大についての考えは。
 「売り上げ、利益とも増加しているのは駅ビルやホテル、分譲マンション。マンションは『MJR』ブランドが浸透してきた。賃貸マンションも計画的に増やし、安定的な利益を確保する。大きな駅ビル開発では熊本の次に長崎駅のリニューアルがある。九州新幹線西九州ルートの開業に間に合わせたい。中小の駅には開発の余地がまだ残っている」

 ―「ななつ星in九州」の人気が続いています。
 「JR東日本やJR西日本も豪華列車を走らせるが、お客さまの獲得には自信がある。ななつ星を巻き込んだ旅を提案していきたい。予想よりも多いリピーターは強み。ルート、食事は変えるが車両の中でいかに優雅な時間を過ごすかという基本的な部分は変わらない。100点だと思ったら陳腐化する。常に100点を目指す」

【記者の目・多面的に生かす取り組みに期待】
 JR九州の非鉄道事業の飛躍を支えているのは同社のブランド力。その源泉は安全運行を続ける鉄道事業にある。上場で可能となる機動的な投資は、安全対策にも十分に振り向けてほしい。ITなどの技術を安全や効率、快適など多面的に生かす取り組みに期待したい。
(聞き手=西部・関広樹)
日刊工業新聞2016年2月18日 建設・エネルギー・生活面
三苫能徳
三苫能徳 Mitoma Takanori 西部支社 記者
関記者が「記者の目」にも書いていますが、JR九州ブランドのコア部分には、常に本業である鉄道事業の“安全と安心”があります。上場後は現在以上に鉄道部門の収益性が課題になると思いますが、他部門を成長させる意味でも安全対策に気を抜かない経営が求められるでしょう。

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